相当えぐい…! でも結末は哀切な、鬼才の連作怪談集
更新日:2012/3/7
えぐいんだろうなあ、飯野文彦さんだもんなあ、怖いんだろうなあ、と思って読んだら実際にえぐくて怖かった、という一冊。
貧しい農村の独身男のもとに嫁いできた女は、身長180センチ強、体重110キロを超える巨体の持ち主でした。顔は猿の尻のように赤黒く、どこに目鼻があるか解らないくらいにむくんでいます。そのあまりにも異様な風体に、村人たちは呆気に取られました。その晩、新婚初夜を迎えた家からは「ぐうおぉぉぉぉ…」「ぎゃああああああ…」というすさまじい嬌声が響きわたります。人間ばなれした体力と性欲と食欲を誇る女の出現によって、小さな村は地獄へと変わってゆきます――。
不気味に退化したものたちの姿が圧倒的に怖ろしい「近親相岩」をはじめ、「ぴちぴちちゃぷちゃぷ蘭蘭蘭」「にがい女」「だいたら墓地」など(タイトルがいいなあ)、グロテスクとエロティシズムがぐつぐつ煮立った短編ホラー全7編を収録。
グロとエロとを描きながら、ホラーの常道をしっかり踏まえているのもさすがです。「無尽講」と呼ばれる地域の寄り合いで怪異譚が語られてゆく、という構成は岡本綺堂の怪談作品を思わせますし、「近親相岩」のじわじわ村に腐臭が漂い出す描写は、海外ホラーのクラシック「ダンウィッチの怪」を連想させます。
無尽講の哀しき結末を描いてホロリとさせられる最終話「ほうとう息子」まで、ぐいぐい読める素敵なホラー短編集。単行本はすでに入手困難らしいので(良い本なのに!)未読の方は是非とも電子版で。
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