本当のことなど知らないほうが幸せ!? 美少女テレパスが容赦なくえぐりだす家族の実像

2011/9/4

家族八景 (上)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:清原なつの原作 価格:621円

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知らなければ良かったことって、けっこうありますね。
  
知りたいと願うけど、知ったことで必ずしも幸せになるとは限らない。
  
それどころか…
  
本書は、『時をかける少女』や『パプリカ』『富豪刑事』等で知られる作家・筒井康隆の人気シリーズ第一作『家族八景』のマンガ版。美少女テレパス(人の心を読み取る超能力者)の七瀬が家政婦として訪れる八つの家庭の内情と、そこで巻き起こるできごとが、狂言回し役である七瀬の目を通して描かれるのですが、これがまあどのご家庭も余すところなくおぞましい(笑)。

たとえば、うわべだけの家族のありさまを描いた『無風地帯』。なんとこの家の父と息子はともに、同一の女性と関係を結んでいます。しかも息子はそれを知っていながら、ことに及んでいるときている(…一話目にしてなんたる設定!)。しかし相も変わらず、平穏な家族ごっこを続ける彼ら。
  
潔癖家の七瀬は、とにかくこーいうの許せないタチらしく、この父子の醜悪な関係を露呈させるべく、なんと家族全員の前である大胆な企みを実行しようとします(彼らも彼らだけど、七瀬ちゃんアナタも充分にこわいよー)。
  
そう、持ち前のテレパシー能力で、一見平和そうなひとびとの内部に巣食う欲望、嫉妬、怒り、憎しみ、狂気(その他とにかく黒くてどろどろしたモノ)をこれでもかとばかりにえぐりだしては「不潔!」「ひどい!」とのたまう七瀬ちゃんですが、ここだけの話じつは彼女は彼女でけっこうしたたかで冷酷な悪女的特性を兼ね備えているわけなんです…。
  
時に自己防衛のため(これはまあ仕方ないんだけど)、しかし時には「実験」と称して(興味本位で!?)、その特性を発揮するのですが、これがまた非常にゾクゾク(≒ワクワク)させられるんですねー(笑)。
  
ちなみに私、原作はたしか七瀬と同年代の頃に読んだのですが、その頃とは共感ポイントも受け止め方も、だいぶ違ってきていることがわかって面白かったです。

ひとところに留まると正体がバレやすくなってしまうため、住み込みの家政婦として家々を点々として暮らしている

自分の中にある秘密の扉の「掛け金」をはずすと人の心が読めてしまう七瀬。普段は、「掛け金」をかけて能力を封印

原作を知っているひとなら「どうやって?」と首をかしげそうな難しい設定でありながら、独特の手法を用いることで原作に忠実にかつさらに表現豊かに描かれている

心の声は、おもに「かぎかっこ」で分身をともなって描写されている。ちなみに、原作では以下のとおり──(どうして、そういうことにだけぴんぴんくるんだよ。このエロ爺)「ぼくは、すべての女の子にやさしいんだ」(手前の情婦にだって、やさしくしてやってるんだぞ。この老いぼれ)

18歳にして「不潔さを知りすぎた」とのたまう七瀬。テレパスは辛いんです!

「そういう考え方が不貞の始まりなのに」「不潔」──正論すぎて、大人はぐうの根も出ませんね

「実験してみる価値はある」「火をつけて観察しようか」──雇い主たちも、七瀬にかかるともはやモルモット同然(苦笑)

相手の精神状況によっては、「掛け金」がおろせなくなることも…(恐い!)

上巻目次。上・下巻四話ずつ収録されている。ちなみに、電車など公共の場で読むと、さっきまで上品な老紳士と思ってたひとが急に別人に見えてきたりすることがあるのでご注意を(笑) (C)清原なつの・筒井康隆/角川書店