天下り先で奮闘(?)する元財務省ノンキャリア&元陸上自衛官の痛快&爆笑小説

小説・エッセイ

公開日:2011/11/15

ハッピー・リタイアメント

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:浅田次郎 価格:594円

※最新の価格はストアでご確認ください。

本書のキャッチコピーは、「最高の人生とは“たいそうな給料をもらい、テキトーに仕事をする”ことである。」となっています。
主人公たちの再就職先、いわゆる天下り先でのユル~い第二の人生が描かれている期待感を裏切らない、浅田次郎氏の2009年作品が電子書籍化されたものです。

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実際に浅田氏自身の身に起こった、30年以上前の借金に道義的責任を感じて返済したという実話からインスピレーションを得て書かれたという説もあります。返済義務のない昔の借金をあえて返済する小説家の心理描写のディテールとリアリティには、ぜひ触れていただきたいとふとけんは思っております。
さて、そのストーリーは。。。

財務省を早期退職したノンキャリア役人・樋口慎太郎と、自衛隊を早期退職した大友勉が再就職先として斡旋されたのは、全国中小企業振興会、通称・JAMSの神田分室。そこは、業務実体のないいわゆる天下り機関の中でも窓際セクションでした。日がな一日を「のんびり過ごすことが仕事」「仕事をしないことが仕事」というこの職場に、ずっと真面目に仕事をしてきた2人は到底馴染めません。生真面目なこの主人公2人は、給料をもらっている以上何とか仕事をしなくてはと考えて「本来の仕事」をするべく行動を起こし始めますが、それが想像以上の成果を上げ始めるのです。そこに元銀行員の立花葵女史が加わり、やがて陰謀を企てていきます…。

JAMSを牛耳る財務省出身の理事の矢島純彦、マッカーサーがいたころのJAMS草創期からの古参の職員・山村 ヒナらが加わって、天下り組織を舞台に織りなす人間模様は、笑いながらも「働くって?」「幸せなリタイアメントって?」を考えさせてくれます。


小説は書き出しを楽しみたい、というのがふとけんの考え方です。多くの作品を世に送り出し、受賞多数で日本を代表する小説家である浅田次郎氏ですが、ちなみにふとけんが好きな氏の作品は、ともに映画にもなった『地下鉄に乗って』『鉄道員』なのです

全国中小企業振興会、通称・JAMSの職員の訪問を受ける小説家の描写は、実際に浅田氏自身の身に起こった実話に基づくとするとかなり興味深いといえます。ふとけんは小説を読む際には、どれくらい読み進んだかは気になるため、上部タップしてこの画面は必須なのです

普段、読み流している言葉を調べながら読むと、楽しみ方が増えますね。ちなみに本書の舞台「天下り先」の「天下り」とは、もとは神道の用語で、神が天界から地上に下ることをいい(天孫降臨など)、「天降る」といったことに由来しています。ふとけんも勉強になりました