心理療法の第一人者のエッセイ。人間の深層心理から生まれる、おはなしの魅力

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

おはなし おはなし

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:河合隼雄 価格:378円

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私はこれまでにビジネス誌を中心に執筆をしていました。現在は結婚・出産というライフイベントを経験し、ワーキングマザー、働き方、育児というテーマにも関心を寄せて仕事をしています。

しかし、中学時代から仕事とは関係なく、関心を持っている分野が1つあります。「心理学」です。専門的に勉強したわけではありませんが、当時ベストセラーになった実在の人物ビリー・ミリガンを取り上げた「24人のビリー・ミリガン」をはじめ、同著者のダニエル・キイスの本、マズローの心理学の本は今でも私の本棚にあります。なので、分析心理学(ユング心理学)を日本に紹介した心理学者の河合隼雄氏の名前はよく知っていたので、著者名にひかれてダウンロードしました。

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河合隼雄氏は心理療法で多くの患者と接して、心理学の著書ももちろん多いのですが、もう1つの顔として昔話の研究をしたり、おとぎ話関連の著書も書いているのです。面白いところでは、ウソツキクラブ会長と自称しています。「おはなし」が大好きな人なんですね。昔話の研究は心理学との関連も深いのですが、本書は著者が朝日新聞に連載していたエッセイをまとめたものです。気になったことや、思い出話など、著者の四方山話です。でもただの四方山話ではありません。人間の深層心理につながる…ちょっとした話なのです。

例えば「共時性」なんて言葉が出てきますが、河合氏の説明は「意味のある偶然の一致」としています。これは余命宣告を受けたガン患者でも短命に終わる人と長生きする人を心理学的に比較研究した機関の発表の中に奇跡的にガンがなくなった人もいたという結果を受けて、心の状態が原因でガンも治ると著者は思ったそうです。しかし、恩師にその考えに警告を受け「ユングの共時性(シンクロニシティ)がヒントになる」と、言われたそうです。これを河合氏は「意味のある偶然の一致」と説明したのです。奇跡的なことが起こることも事実ですが、それを「偶然」として片付けることも出来ず、正面から研究することを考えるための言葉になるのだそう。表面的な部分を見るのではなく、もっと奥にあるものを見る。心理ですよね。

このような著者のちょっとした思い付きや世間話には「ふ~ん」という感じで読み始め、次第にのめりこんで行く、表面的には分かりづらい心理が隠されています。知的な四方山話ですから、会話のネタにもなりますよ!

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立ち読みできるこの「明恵三題」を読むと、タイトル「おはなし おはなし」の理由が分かります

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