オーケンの“ちょいヤバ”名作をリスペクトした新しいテイストの外伝作品

ライトノベル

公開日:2011/11/20

ガガガ文庫 新興宗教オモイデ教 外伝1 桜月事件〜祓除探偵「Z」の冒険〜

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:原田宇陀児 価格:378円

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「『新興宗教オモイデ教』って…オーケンのアレか?」と、原作タイトルにピンときた人。
Play Station版「To Heart」のシナリオのリニューアルに参加、ゲーム「下級生2」(エルフ)の開発に参加、といった著者・原田宇陀児(はらだ うだる)の経歴に「あぁ、なるほど」とニヤリとした人。本作はある意味、この違った読者層のどちらをも取り込もうとする意欲作です。

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いえ、読者層で共通しているのは、もしかしたら“ド・サブカル的”といったキーワードかもしれません。
それもそのはず。原作の『新興宗教オモイデ教』は、巻末解説にあるオーケン(大槻ケンヂ)の言葉を借りると、

「狂気とオタク世代の閉塞感とが、今でいう“萌え”によってかろうじてからみ合い、青春小説と化したかの…ちょっと“やばい”テイスト」の作品で、ファンの中で一大センセーションを巻き起こし、初版発行からもう20年近くも経とうとしているにも関わらず、存在が色褪せることなく、「ライトノベルの源流のひとつだと、あまたの作家やクリエイターが影響を受けたことを公言している」

という、ド・サブカル的異色作。さらに、オーケンを「開祖」と崇めるサブカル畑の原田氏が、このロングセラー作をリスペクトして、原田的サブカル色の血を注ぎ込んで生成されたものが、本作なのです。

つまり、別の得体の知れない生き物がここに誕生した…というか、『新興宗教オモイデ教』そのままでもなければ、「To Heart」や「下級生2」テイストでもない、まったく新しいサブカル作品を楽しむことができる、というわけ。

本作の内容を簡単に説明しておきましょう。

●仲のよい女子高生に誘われて「超常現象研究会」のメンバーとなる主人公…
●乗り込む深夜の旧校舎…
●降りかかる奇怪な惨劇…

いかにも「危なそう」な流れですが、しかし。本作のキモは、ストーリーや設定、キャラクターに終始しません。

「危なさ」以上のモノ。「やばさ」です。

怖いもの見たさの行動は子どもや若者の特権ですが、どうせ大人なら「やばさ」をも垣間見てみたい。ちなみに、危険なものに興味を持つのは、危機回避能力を養うため、本能が求めるのだ、という意見もあるようで。

『新興宗教オモイデ教』のやばさを知っているファンも知らないファンも、本作で新しい「ヤバさ」を見つけていただければと思います。


雰囲気で読み取りたい特異な文体

ポエムのようにキーワードが綴られる

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