意地悪で皮肉なセンスがたっぷりとサプライズを生み出す短編の名手

教養・人文・歴史

2011/11/21

ザ・ベスト・オブ・サキ(1)

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 筑摩書房
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:電子文庫パブリ
著者名:サキ 価格:864円

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サキは、O・ヘンリと同時代にやはり短編をメインに量産していたイギリスの作家です。
O・ヘンリが庶民の哀感を慈愛のこもった目で書きつづったのとは逆に、サキは同じような意外性に満ちたシチュエーションから発想しつつも意地悪で皮肉なセンスを発揮して、読み手を少しばかり戸惑わせるようなそれでいてシャレた結末へ導いてみせるのです。

どっちが好きかといわれたら、わたしは断然サキです。ブラックブラックユーモアという言葉がまだない時代に、こんなものが書けたサキは不思議な人だと思います。

もともとは、フィリップ・K・ディックをはじめとして埋もれていた海外エンタメの大傑作を刊行していたあのサンリオ文庫に、この「サキ短編集」も収められていたのでした。サンリオ文庫がなくなって、若い読者はもうサキが読めないのかと心配していたら、春先のタケノコじゃありませんがちゃあんと出てきて、ずうっと生き続け電子書籍にまでなるのですから、サキの潜在力はやっぱり侮れません。

「エズミ」という短編があります。イギリス人お得意の狩りの話をある男爵夫人がしています。馬で走ってるうちに仲間とはぐれたところ、犬たちがなんか大型の獣を取り囲んでどうしていいか困ってるのに出くわします。どうやらハイエナのようです。犬を返して引き上げようとしたら、このハイエナがついてくるのです。しょうがないからエズミと名前をつけていっしょに歩いてると、ハイエナが遊んでる子供をくわえます。変なことするわねえと思ってると、藪の中に入ってごそごそしてるうちに、子供が妙に泣きわめいてそのうち静かになる。

どうも展開が怪しい雲行きになってくるあたりが、読み手のわくわく感をあおるのですね。僕が昔っから大好きな話は2巻に入ってる「話し上手な男」というので、汽車の中で2人のこともが騒いでいるのですね。おばさんが横で面倒をみてて、いろいろあやした末に子供たちにお話をせがまれる。これがからっきし受けずにさらにやかましくなったところに、向かいに座っていた男がかわりにあるお話をしてあげることになります。子供たちはこれに聞き入ってでぴたりとおとなしくなるのですけれど、さてどんなお話だと思います? 確かに自分も子供だったらこのお話にはやられちゃうなあとつくづく思いますよ。だって読んでる大人の僕が読みふけっちゃったんですから。


訳文はとても読みやすい