「分かりやすい説明」は鍛えれば磨かれるスキル。説明ベタさんはお試しを

公開日:2011/11/29

学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:木暮太一 価格:599円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「分かりやすい説明」を解説した本書を解説するのに分かりにくい表現になっていたら、元も子もないのだけど、その辺はご容赦を頂ければと思う。と、一応先に言い訳。

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昔、僕が中途でリクルートに入社した頃のこと。エレベーターでいかついオッサン(オジサンではなくオッサン)が、「JJ(ジェイジェイ)、最近どうなんだろうな」といった内容の話をしていた。編集者である僕にとって「JJ」とは、もちろん光文社発行の女性ファッション誌のことである。さすがリクルート、いかついオッサンでも世のトレンドを気にかけていらっしゃるのだなぁ、と畏怖の念を抱いたものだ。ところが、その「JJ」は「JJ」にあらず。何てことはない「住宅情報(Jutaku Joho=JJ)」を指していたのだ。

さて本書である。タイトルの通り「分かりやすい説明」をするためのルールが列挙されている。分かりやすい説明といわれると、「表現は簡素に! 内容は論理立てて!」みたいなことを想像する。もちろんそれも大事だし、その方法論が本書の主題ではあるのだが、それよりも大切なことがあるらしい。

それは「相手に理解してもらいたいと思う意識」と「相手に合わせて表現を変えること」。

「JJ」を例にしよう。それが具体的にファッション誌の方なのか、住宅情報の方なのか、話の受け手が分かっているならそのまま使っていい。しかし、そうでない場合は分かるような表現に変換する必要がある。女子大生に「住宅情報」のつもりで「JJ」と言っても通じない。そりゃそうである。

説明相手の存在を第一に意識し、分かってもらうための努力をしよう、というのだ。パッション(大げさ?)あっての「分かりやすい説明」なのであり、ルールなのである。表現力や説明力を向上させるための考え方やトレーニング方法などがふんだんに盛り込まれているが、この「意識」が大前提になっていることに個人的には好感を持った次第。

具体的なルールやテクニックは本文に譲るが、一部を抜粋するとこんな感じ。
たとえば「ストレートな表現を心がける」ために必要なこととして、下記のようなルールが挙げられている。

 「表現に私情や注釈をやたらとはさまない」
 「説明の文章は、一部を短く」
 「一文の中に、言いたいことはひとつしか入れない」
 「主語と述語は近くに置く」
 「修飾語は少なめに。多くなる時は、別の文章で説明する」
 「説明の文章は、知的に見せる必要はない」
 「一文が複数の意味にとれるおそれがある場合は、文章を2つに分ける」

無意識に実行しているものもあるだろうし、どこかのタイミングで習ったことのあるテクニックだったりもするが、それらが網羅的に書かれているのが本書の優れている点だと思う。

そして、最終の第9章には「最終試験」としてこんな問題が用意されている。
“「日銀とは何か」を「社会人」「高校生」「小学生」の3つの年代に向けて説明せよ”
それぞれ、知識の量も異なれば語彙だって違う。そんな人たちに「日銀」をどのように説明すればいいのか。当然、相手に合わせた表現が求められるわけだ。著者による解答例も付いている。

“「分かりやすく説明する」ということは、一種の技術で、後天的に身につけることができる”とのこと、「説明ベタ」のあなたには本書を一読することをおすすめしたい。

「分かりやすく説明する」ということは、一種の技術で後天的に身につけることができる

説明する相手を知ることが大事

トレーニング例:「動きを表す名詞」の変換トレーニング

最終試験:「日銀とは何か」を社会人、高校生、小学生のそれぞれに向けて説明する

ポイントは「相手をお客さん・クライアントと思う意識を持つこと」と「相手に合わせた表現をすること」