『必殺シリーズ』のコンセプトを受け継いだ地獄を見せる少女マンガ

公開日:2011/11/30

地獄少女 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:永遠幸原作 価格:432円

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不条理な闇が渦巻く世の中で痛めつけられ、「いっそ死んだ方がマシだ」「あいつを殺したい」と追いつめられる各話の主人公たちがたどり着くのは、午前0時にだけアクセスできるというインターネットサイト「地獄通信」。怨みを持った者が書き込みをすると、地獄少女が現れて、憎い相手を地獄に流してくれるという…。ただ、自らも死後、地獄行きになるー

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誰も救いの手を差し伸べてくれない、逃げ場のない極限の状態で、どのような代償をも払って、「窮鼠(きゅうそ)猫に噛み付く」といった逆襲ストーリー。ピンときた人もあるでしょう…お金を払って、悪人を成敗してもらう『必殺シリーズ』のコンセプトと似ている、と思うのも当然。本作は、基本コンセプトを『必殺シリーズ』から受け継いでいるのです。

ただし、支払うのは『必殺シリーズ』のようにお金ではありません。前述のとおり、本作では自らの死後の地獄行き。死しても安息が訪れない。考えてみると、今ある命を差し出すより重いペナルティ。それでも、各話の主人公たちは、地獄少女へ懇願する。「憎いあいつを地獄に流してください」と。

悪が罰せられるという勧善懲悪モノですが、「因果応報」と一言で済ますことのできない深さがあります。善に対する報いが少ないのでは、と感じられてしまう。しかし、各話のラストの、依頼者たちのすがすがしい笑顔で、「これもハッピーエンドなのだろう」と思わされる不思議なカタルシスが、本作の独特な味わいでしょう。

「人は人を裁けない、裁いてはいけない」とはよく聞く言葉ですが、どんなに重いペナルティが課せられようとも、卑怯な手であろうとも、追いつめられれば救いの手を選んでいられないのが人情です。

話は変わって、学校は、閉鎖的な空間だと言われます。いったん学校に入ってしまえば、学校の外からは何が起きているか見えづらい。保護者は、学校でわが子がどのような状況にあるのか、知りにくい。

もちろん学校側も、情報を外部に公開したり、地域連携で取り組みを行って学校開放をするなど、透明性を高める努力をしています。ですが、やはり最後は、“大人の気づき”にかかっているのだろう、ということで、「教師力向上」や「親力向上」などのキャッチコピーが書店を席巻しています。

大人が、子どもたちの救世主になり得るかどうかが試されている、とも言えるでしょう。

「地獄って あるのよ」と、本作の主人公・閻魔(えんま)あい(正体は地獄少女)。少女マンガらしく、絵柄がかわいく、ストーリーもわかりやすいが、一方で、人間の闇の部分が丁寧に描かれている

追い詰められる各話の主人公。「地獄通信」にアクセスし、地獄へ落としてほしい人間の名前を送信。代償は、死後の自分の地獄落ち

必殺のキメゼリフ「いっぺん死んでみる?」でカタルシスに向かう。本作は、子どもが読んで怖いのはもちろん、世の中や人の闇を知った大人が読むと、なお恐ろしいことうけあい (C)地獄少女プロジェクト・永遠幸/講談社