旧型の工業製品物は悪ですか?

公開日:2011/12/1

考えるピント クラシックカメラ実用入門

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 岩波書店
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:田中長徳 価格:810円

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作者は写真家でカメラ評論家でもある田中長徳。現代のカメラ機械学として認識されている「好ましい理想のカメラ」とは?

その原型はドイツにある。

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写真機が発明された19世紀初頭から20世紀1920年代まで、世界のカメラのメッカはドイツではなくフォカやサボイフレックスなどを生んだフランス、イギリスにあった。それまで写真機といえば、アコーディオンのような蛇腹を取り付けた型である。だが第一次世界大戦で敗戦したドイツが賠償のため、新型の金属カメラの大量生産を開始する。そして現在のような型が考案されたのである。

しかし、現在では型は同じでも、2種のカメラが存在する。フィルムを使わないデジタルカメラとフィルムを入れるクラシックカメラである。「古カメラ」とも呼ばれるクラシックカメラ。そのクラシックカメラの魅力を語った本である。この本で扱われるクラシックカメラはアンティークカメラではない。古いながらも、実用されるカメラである。著者も現在、1932年製のライカを仕事で使用しているそうである。

本書ではクラシックカメラの楽しみ方が紹介されている。
 ピントを合わせる楽しみ。
 露出を決める楽しみ。
 シャッタースピードを試算する楽しみ。
 現像があがるのを待つ楽しみ。
 できた写真を見る楽しみ。
 壊れたカメラを修理する楽しみ。

これらの多くはデジタルカメラではきない。中でも修理する楽しみは日本の工業製品文化を顕著に表している。実はクラシックカメラの修理というものは、本来は自分の手で行わないほうが安全である。だが修理してくれる場所が少ないのである。たかが15年前ほど前に作られたオートフォーカス一眼レフが、すでにそれを生産したメーカーで修理不能という点はまったくおかしい。確かにこれはメーカーの怠慢であるといえなくもない。

カメラの進化とともに人間の視神経は退化したといわれている。ピントについて常に考えているクラシックカメラユーザーは、常に場所を捉える能力が鍛えられている。つまり本のタイトルにあるように「考えるピント」を持っているのである。

ゆえに撮影する人間にはできるだけ「考えるピント」が必要だと著者は説く。それを鍛えてくれるのはクラシックカメラだけなのである。そして本書はクラシックカメラ大好きユーザーのクラシックカメラ共和国への観光案内であり、その国へ訪問する時、またそこで暮らす時の「考えるヒント」になるはずである。

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