心技体を極めた剣豪・宮本武蔵の力強い生きざまに魅せられる

小説・エッセイ

公開日:2011/12/3

宮本武蔵 (一)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:吉川英治 価格:648円

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誰もが知る、江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵の、紆余曲折を経た自己確立までの成長を、ダイナミックかつ繊細に描く作品。明治から昭和を生きた大作家・吉川英治の代表作のひとつ。本作は、朝日新聞紙上で1935年の8月から連載を開始し、1939年7月までの4年間、読者の人気を集め続けました。

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宮本武蔵というと、代表的な著書である兵法書の『五輪書』や、佐々木小次郎との「巌流島の決闘」が非常に有名で、「心技体を極めた人物」というイメージが強いと思われますが、本作は武蔵がまだ宮本を名のる前、その名を新免武蔵(しんめん・たけぞう)という若者時代から始まります。荒々しく、まるで角がゴツゴツと立った石ころのような武蔵は、武者修行の途中で出会う武芸者たちの存在により、だんだんと角が取れて、磨かれ、玉へと変貌するかのように、心身ともに武芸を極める者になっていきます。

数多の人間との出会いや戦いにより自らが磨かれていくマンガは、現代でたくさんありますが、本作が与えた影響は大きいと思われます。流れやストーリー面だけでなく、多彩かつ骨太で魅力的なキャラクター、ドラマチックな演出、そして臨場感あふれる描写など、エンターテインメント要素がぎっしり。文学だどうだとあまり気負わずに、「空いた時間に楽しんでやろう」くらいの軽い気持ちで読んでみるのもいいと思います。

新聞連載当時、日本は太平洋戦争下にあって、いくら相手に踏まれても、辛酸を舐めても、諦めずに食いさがっていく武蔵の必死な姿に、人々の心は呼応し、奮起を促された、といわれます。

今でも有名マンガでよみがえり、青少年を中心に力強い生きざまで魅了し続けている宮本武蔵。若者だったり日本人だったりの軟弱化だとかなんとかなどといわれますが、日本人が愛してきた武蔵像を今いちど見直してみるのは、とても有意義なことでしょう。

武蔵(たけぞう)の荒々しい壮大な物語が始まる

ダイナミックかつ繊細な風景描写。臨場感に圧倒される

敵との泥まみれの取っ組み合いの末…残酷な描写も赤裸々に綴られる (C)Eimei Yoshikawa 1936