【ダ・ヴィンチ2016年4月号】今月のプラチナ本は 『ラメルノエリキサ』

今月のプラチナ本

2016/3/5

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『ラメルノエリキサ』渡辺 優

●あらすじ●

女子高生・小峰りなにはモットーがある。それは、どんな些細な出来事でも自分にとって不愉快であれば、絶対やり返すということ。彼女は復讐に取り憑かれているのだ。そんなりながある日、夜道で背後から切り付けられた。激しい痛みと怒りで意識が混濁する中、犯人が残したのは「ラメルノエリキサのためなんです」という言葉。退院後、りなはさっそく犯人捜しをはじめた。怒りに燃える復讐の申し子をママもパパも警察さえも、止めることはできない。そして、彼女がたどり着いた事件の真相とは──。第28回小説すばる新人賞受賞の、痛快青春ミステリーがここに。

わたなべ・ゆう●1987年、宮城県生まれ。大学卒業後、契約社員として働くかたわら小説を執筆。3作目となる本作「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。

渡辺 優
集英社 1200円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

ルールに収めきれない揺らめきときらめき

迷うことだらけの人生において、自分のルールを決めるというのはひとつの対処法だ。混沌とした世界に対し、まっすぐに突き進むことができるはずだから。本作の主人公・りなの場合は「復讐」がルール。「復讐」すれば「すっきり」できる。その原則のみで彼女は思春期を乗り切ろうとする。だがルールに徹しきれない、ルールに則っていてもふと気弱になる、そこにこそ思春期の揺らめきときらめきが表れていて、本作を一級の青春小説にしている。復讐ガール、文学少女(を気取る少女)、賢いお姉ちゃんなど、いかにも〝キャラ〟という感じの登場人物たちそれぞれに、キャラの枠に収まらない揺らぎがちゃんと描写されているのが本作の美点だ。孤高を貫こうとして、でも誰かとつながりたい。そんなすべての〝青春〟経験者におすすめします。

関口靖彦 りなの「それってなんだか、とってもファック。」というモノローグが、繊細で凶暴で大変キュートでした。文章のリズミカルさ、キャッチーさも本作の大きな魅力だと思います。

 

不謹慎な復讐ガールにこんな心惹かれるのは?

復讐──なんてネガティブな!と思って読み始めたのだが、読み進めるうちにどんどん彼女のことが気になっていく。「私にとって、復讐とはどこまでも自分だけの為に行うものだ。自分がすっきりする為のもの。すっきりするっていうのは、人が生きていく上でとても大切で重要な事だ」─自らの復讐心に向かって突き進んでいく孤高のさまは、たとえその目的が「復讐」であっても清々しさすら感じてしまう。「ラメルノエリキサ」という謎の言葉に隠された意味と犯人探し、そうしたミステリーとしての体をとってはいるものの、読者の気持ちを強く引っ張っていくのは、主人公りなの心の動きだ。強くあろうとするなかで、ふと垣間見せる寂しさ。独特のユーモアセンス。母や姉との微妙な距離感。甘さと暗さを排除した女子高生ハードボイルド小説。

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すごい新人が現れた。

「復讐」をモットーに生きるヒロインの小峰りさ。一見、身勝手で不謹慎にも思える主人公なのに、そこには彼女なりの信条があり、どこか一本筋が通っているので、不快になるどころか、むしろどんどん彼女を好きになってしまった。それはきっと、彼女がお仕着せではない、自分で決めたルールで生きているから。だから、彼女は清々しいのだ。「人を殺してはいけないのか」と聞いてくるような子どもや学生に対して、一体どう答えるのが正解だろうと時折考える。それはいけないことだから、ではきっと納得しないだろう。そんな人には、私が答えるよりも、この本読んでもらったらいいんじゃないかしら、と読みながら思ってしまった。それをあくまでも、面白いエンターテインメントの顔をしてやってのける、著者の今後の活躍におおいに期待したい。

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主人公がとっても魅力的!

16歳の“りな”が物語の冒頭で語る「復讐」へのスタンス。とても過激で、でもなんだか納得しちゃうのは、悪びれないりなの振る舞いとともに、渡辺さんの軽やかな文体にあるんじゃないかと思う。攻撃的でぱきっと一直線なのに16歳の女の子らしいゆらぎがある、そんなりなは魅力的で、とても好感を覚えた。また彼女のまわりにいる女性陣も個性的だ。個人的にはお姉ちゃんが大好き。お姉ちゃんがりなへ向ける愛情表現が、姉である私にはとてもしっくり共感できた。

鎌野静華 はじめて救急車のお世話になってしまいました。意識を失いそうになっている状況だというのに救急車を呼ぶことに対する心理的葛藤がすごかった……。

 

脳内リピート必至のメロディアスな文体

意識して文字を追ったのは最初の数行で、あとは独りでに物語が流れ込んできた。「絶対許さない。ぶっ殺す。(中略)お姉ちゃん大好き」(本文77ページより)。口が悪くて潔癖な主人公による一人称文体は淀みがなく旋律的なつながりが感じられ、スマホの画面をタップするようなリズムで次々と新しいシーンに誘われる。主人公を中心とした女性キャラクターが圧倒の魅力で、個人的には中盤に登場する男嫌いの陸上女子・佐久間美月を主役級にした短編をぜひ読んでみたい!

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次作も「絶対読みたい」作家に出会った

読後には「うまいなあ」と唸った。作品全体的に軽快で、リズミカル。ライトさがあって、すいすい物語に入り込める。主人公は「やられたら絶対やり返す」がモットーの女子高生。彼女は夜道に何者かにナイフで切りつけられ、その復讐に燃えるが……と物語の内容をざっくり説明するとダークにも思うが、そんな暗さは微塵もなく、ずっと明るくて、強い。「私はちゃんと、自分が大好き」って言う主人公には軸があって、共感もできる。著者の次作も絶対読んでみたいと思う。

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みずみずしくて、だいぶおきゃんな復讐劇

「やられたら絶対やり返す」を忠実に行動にうつしちゃう、復讐癖のある主人公。ママやお姉ちゃん、彼氏への思い、復讐への固執─彼女が思考するだいたいの事柄は、思春期特有のナルシシズムのようで微笑ましい。その自己愛が、物語の佳境でちょっとした変化をみせる。16歳女子の心の清らかな成長が「復讐」を通して描かれる、というユーモアを、若々しいリズムの文体が後押ししている。感受性豊かな少女が抱く“自分以外”へのまっすぐな臨戦態勢が心地好い一冊。

地子給奈穂 先日、金沢へカニを食べに行きました。久々の大奮発の甲斐あり。美味に加え、温泉かけ流しも堪能。美肌の湯らしいのだけど……効果の程やいかに。

 

健やかJKの割り切れない想い

割り切れる問題は容易い。例えばそれは復讐。自分を不愉快にした相手に、同等の仕打ちをして御破算にすることで、自分と他人の問題を割り切るのだ。復讐に取り憑かれた16歳のりなは、それを「歪みを正す」という。だが、問題は他人がもたらすばかりではない。復讐では正しきれない歪みを自分の中に認めた時、そして、色々あってその割り切れない感情を許せるようになった時、「あ、なんだ私は私のままでいいんだ」、と気づく彼女の健やかな跳躍が、最高にキュート。

高岡遼 来月号の特集をせっせと準備中。1特も2特も豪華書き/描きおろしが盛り沢山の予定です。詳しくは次号予告をチェック、乞うご期待!

 

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