市民が関心を持つような分野の研究が市民科学。その専門家を市民科学者という

2011/12/18

市民科学者として生きる

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 岩波書店
ジャンル:IT・科学・医学 購入元:eBookJapan
著者名:高木仁三郎 価格:885円

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著者の高木仁三郎は日本の物理学者、理学博士であり、日本原子力事業、東京大学原子力核研究所、シンクタンク原子力資料情報室の設立に参加。第二のノーベル賞と称される名誉ある国際的な賞ライト・ライブリフッド賞の受賞者であり、原子力発電の持続不可能性、プルトニウムの危険性について、専門家の立場から警告を発し続けた人物である。著書は他に「プルトニウムの恐怖」「プルトニウムの未来」「原発事故はなぜくりかえすのか?」がある。

本書は1999年3月から5月に執筆。著者は20世紀を反芻し、21世紀へと繋ぐことのできる前向きなメッセージを若い人のために残しておこうと考えたのが本書の執筆動機である。

市民科学、市民科学者とはなにか?
軍縮や環境など市民が関心を持つような分野を「市民科学」と呼ぶ。そしてその研究の専門家を市民科学者だと本書では定義されている。著者にとっての市民科学は「核」「原子力」のエネルギー研究である。

科学史的に言えば、「核」の発端は19九世紀末における一連の原子核現象の発見、1895年レントゲンによるX線の発見、96年ペクレルによる放射能の発見、98年キュリー夫妻によるラジウムの発見に遡ることができる。だが1938年のハーンとシュトラスマンによる核分裂現象の発見が大事件だと考えられる。これにより核開発は飛躍的に進歩したのである。

以降核エネルギー問題は危険性を内包しながら現在に至る。そして著者が本書で指摘するのは核エネルギーの中央集権型統制である。

現在、原発は核兵器と切っても切れない関係にある。核兵器保有を目指す世界の経済大国が、経済的にはまったく見通しのない状況で、潜在的な危険性も大きい、原子力産業へ国家主導的に大量投資をして取り組んだのは、もちろん核兵器開発に乗り遅れたくないとう思惑があったからだと著者は指摘。したがって原子力問題には、常に国際政治的力学が背景にあり、国家機密の技術である故の機密性、閉鎖性がつきまとうのである。

原子力のような中央集権型の巨大技術を国家や大企業がひとたび保有するならば、核兵器の保有とは別に、それ自体がエネルギー市場やエネルギー供給管理のうえで、大きな支配力、したがって権力を保障する。風力などの地域分散型のテクノロジーを軽視し、日本の政府が原子力にとびついたのは、この中央集権性ないし支配力が原因なのである。この問題の根底にあるのは、巨大テクノロジーと民主主義がどこまで相容れるかというジレンマであると著者は語る。

市民が関心を持つような分野を市民科学と呼ぶならば、確かに原発など核エネルギー問題は今の市民にとって一番関心の高い科学のはずである。

目次。著者の自分史も明かされる

研究原子炉TTR-1の写真

全国各地を公演などで回る著者

ライト・ライブリフッド賞授賞式の場で (C)高木仁三郎/岩波書店