文章で綴られる「ドラえもん」は切なくも美しい

小説・エッセイ

更新日:2011/12/21

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:瀬名秀明 価格:907円

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藤子・F・不二雄のライフワークとも言える、「大長編ドラえもん」シリーズ。
コロコロコミックで短期集中連載され、ほぼ間を置かずに映画化、という最強の流れ。
その中でも特にメッセージ性が高く、一部で最高傑作とも呼ばれる作品が、「ドラえもん のび太と鉄人兵団」である。

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“鉄人兵団”は2010年に「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」というタイトルでリメイク。この映画の公開にあわせ、ほぼ同じタイミングでノベライズされたのがこの「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」。作者は“パラサイト・イブ”や“八月の博物館”で知られる瀬名秀明。かつてのドラマニアとしては非常に興味をそそられた。

…藤子・F・不二雄の絵を抜きにして読むドラえもんが、こんなにも切ないとは思わなかった。特にこの“鉄人兵団”は、人間とロボットの「闘争」と、そこから生まれる「交流」というやや重いテーマ。もちろん原作からもそれは充分に感じられるのだけど、絵が文章に変わっただけで感度は倍増。ある程度の「痛み」までもが伝わってくる。

瀬名秀明による圧倒的な描写力。原作をかなり丁寧に読み込み、更にロボット工学の権威である氏ならではの調理方法が、ある意味でマンガを凌駕する説得力をもって迫ってくる。そして、文中のあらゆる場面から藤子・F・不二雄に対するリスペクトが感じられるのがポイント。ドラマニアとしては、非常に好感が持てる。

マンガやテレビ、映画のノベライズは多々読んできたのだが、この作品は完全に一線を画した傑作。紛れもなく”ドラえもん”ではあるのだが、大人がキチンと読める、しっかりしたSF小説。ドラえもんを通った覚えのある人なら、必ず満足するはず!

ちなみにこの小説版、原作ともリメイク版映画とも違う独自のアレンジが施されている。
ネタバレがもったいないので詳細は省くが、ヒントは藤子・F・不二雄の他作品キャラの登場。その辺りにもぜひ注目してほしい。

フォーマットはXMDF形式、読みやすく美しい初期デザイン

お馴染みのイラストは口絵と扉絵のみ、こちらは口絵のオールカラーイラスト

扉絵のモノクロイラストはお馴染みのキャラクターがキリリとした表情を見せる

XMDF形式の設定画面は直感的で解りやすく、初心者でも簡単に自分好みの設定が可能

設定から「ルビ表示」をオフにすると、グッと大人向きの画面に変貌する

文字サイズは自由に設定可能、好きな文字の大きさに微調整できる