著者の人間描写は流石としか言いようがない。昨年のテーマ、『絆』の物語

2012/1/3

海街diary (1) 蝉時雨のやむ頃

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:吉田秋生 価格:432円

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鎌倉に住む幸田三姉妹の元に舞い込んできた突然の父の訃報。父は三姉妹が幼い頃に自分たちと母親を捨て、女の人と駆け落ちし蒸発していたのだった。

山形県にいたという父の葬儀に出席することになった3人は、そこで父の娘、つまり自分たちの義理の妹である中学生のすずという少女に出会う。そしてそこから三姉妹とすずの、鎌倉を舞台にしたひとつの家族の物語が始まる。

同性愛の女子高生の細やかな心情を描いた『ラヴァーズ・キス』や、ニューヨークのギャングたちの世界を描いた『BANANA FISH』などで有名な吉田秋生さんの作品なだけあって、人間描写が本当に上手く、読みながら「なるほど~」と唸ってしまった。

第一話は父親の葬儀にでる為に山形県の温泉地に三姉妹が行くというお話。
自分たちを捨てた父親、そしてその後自分たちを祖母に押し付けて家を出て行った母親。そんな二人を見て育った長女のサチ姉は、病院の小児科で看護師として働いているという現在の境遇も相まって、人間観察の目が鋭い。葬式で泣き喚き、喪主を長女のすずにやってもらいたいと言った妻の陽子を「おとなのするべきことを子供に肩がわりさせてはいけない」と一喝するシーンはかっこいい。

「死んでゆく人と向き合うのはとてもエネルギーのいること」
そう言って、さして看病もしていなかったであろう妻の陽子に対し頭を下げたサチ姉には私も頭が下がりました。サチ姉いわく「だってオトナだもん」だそうです。さすが…。

第一話のラストのすずと三姉妹の父親への想いには涙があふれてしまいました。

第二話からは妹のすずが鎌倉に来て一緒に住むことになってからのお話。
ここから鎌倉を舞台にした物語のスタートです。歴史のある古都鎌倉は、山もあるし海もあるし神社仏閣も数多くあるし、歩いているだけで楽しい街。そんな素敵な街の古い一軒家で、自分たちでつけた梅酒なんかを飲みながら和気あいあいと暮らす四姉妹。一人暮らしの私は読んでいるだけで心が温かくなりました。家族っていいなぁ~鎌倉も住みたいなぁ~。いい小説や漫画は舞台背景がしっかりしているけれど、この作品もまさにそれですね。

今年の漢字である、人と人との『絆』がテーマの物語です。

父親が死んだというのにあまりピンと来ていない次女の佳乃

丸いちゃぶ台を囲む三姉妹。こういう何気ないシーンにも家族の温かさがありますね

義理の妹の“すず”に出会う

小児病棟で働いているサチ姉だからこそ言える台詞

四姉妹の鎌倉物語のスタートです (C)吉田秋生/小学館