乾いているっていうのに、あぁなんてパッショナブル!!

公開日:2012/1/13

乾物入門

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 日本食糧新聞社
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:蔀一義 価格:648円

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「乾物入門」というタイトルの専門書に「ハラハラドキドキ」「元気になる」「泣ける」というお勧めアイコンを迷わず選んでいる自分は、相当変わり者なのだろうか? と自問してやみませんが、この興奮はやはり伝えなくてはなりません。まず。こうした本は、本屋でさくっと見つけられる類ではないこと。こういう出会いは電子書籍ゆえ、情報社会に感謝せずにいられません。

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著者は学者ではなく、乾物業界で生きてきた人物であること。実地の経験と目利き、さらには膨大な資料を読んで分析、情報収集してある本であること。簡潔な文章の中にも、「あっ! これはどうしても書いておかなきゃ、乾物がかわいそう!」というような著者の乾物への愛がにじみ出ていること、などなど。好感度MAXな専門書というのはそう簡単にお目にかかれるものではありません。

確かに、私のように恐らく普通の人以上に食べ物に執着があり、さらに海外在住で日本の伝統食に(手に入るけど)飢えている感が癒えない日常で、こういう本を読むとその効果も印象も日本在住の方々とはまるで違っているのかもしれませんが、学びどころ満載、いろんなことがクリアにわかる1冊で、リアル本を探し出し、台所において愛読書にしたいタイプの本です。

小麦粉に種類があるのは皆知っていますが、小麦粉も熟成期間があるってご存知でしたか? 冷麦も通年スーパーで見かけるけど、寒中の12月から3月に作って、3ヶ月寝かせたものが良品って、知っていました? あずきは、買占めなどの人為的投機が起こりやすく、「赤いダイヤ」と呼ばれているとか、インゲン豆は南米からヨーロッパ→中国→日本と伝わってきたという話、日本は国産のゴマはほとんどなく、世界最大のゴマ輸入国であるとか(そしてマドリードの食材店で血眼になって日本産のゴマ製品を探していた私)。あぁ。目からうろこの逸話、歴史、現状の数々。さらには突然「ブラマンジュ」の作り方が紹介されていたり、和歌山で絶滅の危機にある鯨の軟骨が原材料の「かぶら骨」の話で、あぁ、一度だけでいいから食べてみたい、と誘惑されたり。粉の種類の多さ、豆の種類の多さ、海藻類はいわずもがな。恐らく日本の市場に出回っているものを全て網羅し説明してあります。

改訂5版までいっているのが十分に納得できる内容。乾物業界のバイブルみたいな本なのではないでしょうか。どんな業界でも専門家の話というのは心底面白いものですが、これほど私たちの生活に身近で、しかもこれほど地味な食品の世界を知る、というのは最高に刺激的です。料理好き、食べ物の薀蓄にはちょっと自信が、という方。蔵書のひとつに強くおすすめします。

小麦の種類もこれだけあります。その製造過程まで詳しく説明

三輪そうめんを作るの図

「そばきりは浅草の道好庵の手打ちそばは第一の名物なり」という図。「あそこのあれ食べたい」と思わせるグルメ本は昔からあったんですねぇ

実家で杵と臼でもちつきをしていたせいで、もちはもち粉で簡単に作れるということをまったく考えなかった私には革命的な教え

著者は浅草「萬藤」の代表取締役だった人物。さすがの内容です (C)蔀一義/日本食糧新聞社