【ダ・ヴィンチ2017年4月号】今月のプラチナ本は 『ゴールデンゴールド』

今月のプラチナ本

2017/3/6

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『ゴールデンゴールド』(1〜2巻)

●あらすじ●

内地の中学になじめず、祖母が住む瀬戸内の離島で暮らしている早坂琉花。彼女はある日、海辺で奇妙な置物を発見する。その置物を持ち帰り、冗談半分で「ある願い」を込めて山中の祠に置いてみると、目前に、“フクノカミ”に似た異形が現れたのだった。琉花と、東京から島の取材に来た作家と編集者のほか、ほぼすべての島民の目には「フクノカミ」は異形と映らない。「フクノカミ」はお金を集める力があり、その周囲の人間にめざましい財福のご利益をもたらしていく。しかし島民たちはそのご利益によって徐々におかしくなっていくのだった──。

ほりお・せいた●広島県生まれ。高橋のぼる氏と能條純一氏に師事。連載デビュー作『刻刻』(全8巻)が話題となり、マンガ大賞2011にもノミネートされる。本作品は『刻刻』完結から約1年後の新作。

『ゴールデンゴールド』

堀尾省太
講談社モーニングKC 各620円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

人は金を使っているつもりで、金に動かされる

お金って何だろう。身近すぎて、ふだんはその存在を疑いもしないお金。金塊とちがって、貨幣そのものに価値があるわけではない。「これは1万円です」と人間が決めただけの紙きれ。それなのに人間がどう生きるかを、規定してしまう。存在しないものなのに、ありがたいものに見え、人を呪縛する。そして人は金を使っているつもりで、金に動かされる。その不気味さ、薄ら寒さに姿かたちを与え、物語として描き出そうとしているのが『ゴールデンゴールド』だと思う。「楽しい」「面白い」ではなく、ひたすらに「怖い」マンガ。でも、著者の迷いのない筆はこびが、「ここには大切なことが書いてある」と読者に確信させる。前作『刻刻』で「時間」という概念を突き詰めて描いた著者が、「お金」という概念をどうつかまえるのか。目が離せない。

関口靖彦 本誌編集長。「マンガ大賞2017」の選考員を務めているのですが、ノミネート13作品に『ゴールデンゴールド』も入っています。結果発表は3月28日。大賞の栄冠はどの作品に!?

 

見えないフクノカミこそ恐ろしい

日常の中にひたひたと狂気が忍び込んでくるようで、すごく怖いマンガなのだが、フクノカミの表情だったり動きだったりがコミカルで、ゾッとしながらも笑いながら読んだ。人間誰しもお金は欲しいし、豊かな生活はしたい。琉花のおばあちゃんだって、フクノカミを人間扱いするところはおかしいけれど、周囲の人に対する態度もまっとうだし、事業を拡大していきたいという欲求もわかる。人格が壊れているようにも見えない。だからこそ、恐ろしいのだ。本作では不気味なフクノカミとして視覚化されているが、現実であれば、もたらされるフクはウイルスのように知らず知らずに蔓延し、人々の欲望のタガを外してゆく。持てば持つほどにもっと欲しくなるのがお金。本来それは人を幸せにするはずのものだったのに、支配されてしまうという皮肉。

稲子美砂 稲子美砂 穂村弘さんのエッセイ集2冊を角川文庫から刊行。『もしもし、運命の人ですか。』(新装版)、『蚊がいる』。仲條正義氏、横尾忠則氏による素敵なカバーにもご注目を(195p参照)。

 

フクノカミは怖いけど琉花ちゃんはかわいい

先に言ってもよいでしょうか。フクノカミが怖い…と……! 琉花ちゃんとフクノカミの出会いが、もし自分に起こったらたぶん失神してる(笑)。お金はたくさんあるほうがいい。宝くじ当たらないかなぁと買ってもいないのに妄想するくらいには。でもフクノカミに邪悪な何かを感じるのは、お金に対して後ろめたい気持ちを持っているからなのか。フクノカミと寧島の大人たちがどうなっていくのかも、もちろん気になるが、琉花ちゃんが好きなので幸せになるといいなと思う。

鎌野静華 お金はお金でもこちらは堅実。『マンガで簡単! 女性のための個人型確定拠出年金の入り方』3月23日発売。所得税払ってる人は絶対やるべき!

 

離れ小島にコンビニとスーパーは並び立つか

お金にこだわるのは野暮だけど、もらえるのならもちろん欲しい。私はどうしてそう思うのか? 物語の舞台となる寧島は言わばひとつの生態系だ。そこに突如現れたフクノカミという異物が島民たちの均衡を破壊してゆく。印象に残ったのは「人間は自分で理由を後付して勝手に納得する」というばーちゃんの台詞。だとすればフクノカミに支配された後の世界には一体何が残るのか? 禍々し過ぎるフクノカミ、という究極のビジュアルギャップとともに、寧島の今後から目が離せない。

川戸崇央 紗倉まなさんの小説デビュー作『最低。』が『64−ロクヨン−』の瀬々敬久監督により今秋映画化。新作小説『凹凸』は3月18日刊行予定です。

 

絶妙な気持ち悪さがとても怖い

絶妙な気持ち悪さがずっと作中つきまとい、読後に怖さが残る作品だ。その気持ち悪さが、とっても面白くてページがどんどん進む。瀬戸内海に浮かぶ小さな島の、小さな町が舞台。〝フクノカミ〟が、島全体をちょっとずつ、お金という欲をもって飲み込んでいく。最初勝手に「座敷童子」的なイメージでいて、羨ましいな~くらいに思っていたが、とんでもなかった。田舎の独特の閉塞感、人間関係がうまく展開に取り込まれながら、描かれていたように思う。今後の展開に期待!

村井有紀子 星野源さんのエッセイ集『いのちの車窓から』が3月30日(木)発売! そして来月号は「星野源総力特集」(表紙も!)。気合入ってます~~。

 

キモカワ恐ハラハラ楽しい!

まず、キモい。フクノカミの外見だ。不自然な半笑いの表情、異様に長い耳たぶ。ニュッと舌を伸ばしてご飯や酒を啜る姿も奇妙だ。だが、妙にクセになる。小さくてペタペタと歩く姿がなんとなく可愛らしく見えなくもないし、それに周囲の人に富をもたらすという素晴らしい特典つき。そう、この能力が恐い。暢気な田舎の人々がお金に魅了され、徐々に渦巻いてゆく泥沼劇にハラハラ。やがて、明かされていくフクノカミの秘密……。続きが気になる、これからも楽しみな注目作!

高岡遼 人生で初めて宝塚歌劇を観ました。これまで体験したことのないエネルギーを浴び、不思議な多幸感に包まれました。体が芯からぽかぽかしました。

 

「ふつうの願い」が心を侵していく

表紙を直視できないほどフクノカミが怖い! でもよく考えたら、私たちが当たり前のように手を合わせている神仏とそんなに変わらない造形だ。そのことに気づいて、ぞっとした。今よりちょっとリッチな暮らしがしたいとか、店が繁盛してほしいとか、最初は実にほのぼのとした願いなのだ。でもそれが、徐々に人の心を侵し、島全体を狂わせてゆく。これはたぶんヒトゴトじゃないのだろう。フクノカミが後ろに立っていそうで、しばらく本から顔を上げられませんでした。

西條弓子 断捨離が大好きなのですが、神仏モノはさすがに捨てられず困ります。フリマで買った謎の仏像を渡そうとするのはもうやめてください(父へ)。

 

 

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