【ダ・ヴィンチ2017年6月号】今月のプラチナ本は 『出会いなおし』

今月のプラチナ本

2017/5/6

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『出会いなおし』

●あらすじ●

新人イラストレーター時代に仕事を共にした誠実な編集者・ナリキヨさんと数年後に再会。ファッション誌に異動した彼は以前とずいぶん変わっていて──。思い出の人とのくり返しの「出会いなおし」を描く表題作をはじめ、デパートで購入した惣菜に違和感を抱いた主婦と惣菜店の攻防を描く「カブとセロリの塩昆布サラダ」、小学校時代、30人31脚大会に参加したときの苦い思い出をめぐる「むすびめ」など、人の出会いと別れ、人生の大事な瞬間を描きだす6つの物語。

もり・えと●1968年東京生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、『カラフル』で産経児童出版文化賞、『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞するなど児童文学で高い評価を得た後、2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞。他の作品に『永遠の出口』『ラン』『みかづき』などがある。

『昭和の店に惹かれる理由』

森 絵都
文藝春秋 1400円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

“別れ”は“終わり”ではない。またいつか。

人が歳を重ね、生きていくことを、全力で肯定してくれている本だと思った。生きていくうちに誰かと出会い、つかの間をともに過ごし、別れ、でもまたいつの日か。そのたびに、お互いに何かを得る/失う。そうして変化して、また新たな影響を周囲に及ぼしていく。“別れ”は、“終わり”ではないのだ。収録作「テールライト」で、それぞれの別れ際に放たれる「どうか、どうか、どうか──。」というリフレインが、読み終えた今もずっと胸の中に響いている。小さく非力なひとりひとりは、祈ることしかできない。でも祈りは、人を、そして世界を、変えていくのではないか。だとしたら“別れ”がもたらすのは、失意や恨みだけではないはずだ。誰とも別れずに生きていくことはできない以上、その先を生み出す祈りの力は、人生を支える貴重な柱となるだろう。

関口靖彦 本誌編集長。現代日本の世相と空気を鋭く捉えた極・近未来SF「カブとセロリの塩昆布サラダ」が、いい話でありつつすごく怖かったです。来年にはこういう社会になっているかも。

 

カブという野菜のセレクトにセンスを感じた

人生、山あり谷あり。歳を重ねることも悪くない。そう思わせてくれる短編集だった。6つどれも好きだけど、とくに沁みたのは「出会いなおし」と「カブとセロリの塩昆布サラダ」。「出会いなおす」っていう素敵な考え方はもちろん、“仕事”というものがその人を形作るうえでいかに大きな位置を占めるかってことも。「カブとセロリ〜」は、人生が年輪であることを実感させてくれた一編。清美の主婦歴30年の矜持こそが20代の若造の仕事観を変えた。この作中できっと誰もが圧倒されるのが、1ページ半にわたるカブ料理の列挙。ここまでカブと付き合ってからきたこそ、清美はなにか言わずにはいられなかったのだ。野菜の中でのカブの存在を考えたとき、人間社会におけるマイノリティにも重なって、彼女の行動がいたく力強く、また心強く感じた。

稲子美砂 穂村弘さんと行った京都があまりにも楽しくて、その楽しさをより多くお伝えできるように特集を作りました。たくさんの“ワンダー”に出会えた旅。プライベートでもう一周を計画中。

 

再会を楽しめる自分でありたい

表題作の「出会いなおし」が一番好きだ。オビに抜粋された「年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ。」という一文にとても共感した。それは振り返って自分自身にも言えること。思い返すと20歳の自分と30歳の自分は違う。30歳の自分と40歳の自分もかなり違う。基本的に今しか考えない=だから今がベストという楽観的な人間なので、あまり変化ないかなと思っていたけれど、人間成長するんだなぁと。50歳の自分も楽しみだ。

鎌野静華 夏の終わりに両親と旅行を計画中。まだ余裕だろうと思っていても結構ホテルやチケットの手配に手こずるのです。皆さん予定立てるの早いなぁ。

 

いまこの一瞬を生きるから、出会いがある

電車でカフェで公園で、一編ずつ、違う空を眺めるように読んだ。本を開くたび、『出会いなおし』というタイトルがそれぞれの短編を何倍にも輝かせた。登場人物たちはみな、それなりの問題を抱えているけれど、やがて彼らが「今度は」「また会おう」などと、再会を祈る言葉を口にするとき。未来ではなく、いまを愛おしく思っているのだった。大人たちが「どうか」と願い、子どもが「いいね」と応えるとき。彼らは大切な人と、いまこのとき結ばれたいと心を震わせるのだった。

川戸崇央 ほたるいかを知っていますか。僕にとっては十年来の酒のともなんですが、先日初めて青白く光るその姿を見ました。ほたるって、こういうことか。

 

今の頭と心であの人を思い浮かべる

「テールライト」を読んで、ハッとした。「もう自分には縁がない」と連絡を絶った人が、何人いるだろう? また会えますように。あなたの幸福を祈れますように。どうか、どうか、どうか──。うまく構築できなかった関係性に素直な気持ちを隠し、離れて、それでもどこかでそう、願っていた相手も、私にはいたはずだ。今の頭と心で、その人のことを思い浮かべる。不思議と温かさが湧く。また新たな気持ちで「出会いなおし」はできるのかもしれない、そう思わせてくれた。

村井有紀子 星野源さんエッセイ集『いのちの車窓から』24万部突破! 大反響ありがとうございます! 「男を読む」特集も担当。扉イラスト、最高です。

 

「出会いなおし」って素敵な考え方だ!

単なる「再会」ではなくて、「出会いをやりなおす」というところがミソ。途切れた人間関係の続き、ではなく再スタートがテーマの本作、なかでも、かつて「30人31脚」に挑戦したあるクラスの同窓会を描いた「むすびめ」が大好きだった。別れの形が上手くいかなかったことはある。でも、空白の時間にも自分も相手もそれぞれの人生を重ねているから、そんな過去も受け入れながら「良い出会いなおし」がいつか出来るよ、とこれから歳を重ねていくことを励ましてもらえた気がした。

高岡遼 今月19日より映画『夜明け告げるルーのうた』が公開します。それに先駆けて10日にはノベライズも! 詳しくは、124Pをご覧ください!

 

人間関係がしんどい人へ

「会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる」。表題作にあるこの言葉にしびれた。人は多面体なのに、ついそのことを忘れてしまう。いま見える一面だけを見て、憎んだり、失望してしまったり。でも、自分も同じく多面体なのだから、面と面の組み合わせが変われば心地いい関係が築けるかもしれないのだ。本書に収められた物語はいずれも、そんな気づきを与えてくれる。すべての人間関係をなめらかにできなくても大丈夫。生きているかぎり、私たちには「出会いなおし」がある。

西條弓子 再会といえば同窓会です。スマートに欠席する人がちょっと憧れで、断る文面まで考えているのですが、誘われないので使えない。本当は行きたい。

 

 

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