月収5万円時代も…バラエティ番組に引っ張りだこ「DJ KOOの人生訓」が心がくじけそうなときに効く!

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公開日:2017/6/10

『EZ DO LIFE!』(DJ KOO/小学館)

 春に環境が変わった人にとって、5~6月は心の緊張感がほどけてゆるみが出やすいシーズンだ。たまっていた疲れに気づいて、最近なんだか落ち込み気味という人には心の元気をチャージするべく、DJ KOOさんの『EZ DO LIFE!』(DJ KOO/小学館)をおすすめしたい。

 近年バラエティ番組で見かけるKOOさんは、いかなるときでもゆるんとマイペースな言動で周囲を和ませ、人生を前向きに楽しんでいるように見える。モニタリング番組などで予期せぬトラブルに直面させられても不快感を示すことなく、リアクションもやわらかだ。人は心も体も柔軟性が高い人ほど、いざというときケガをしにくい。彼のやわらかなパーソナリティはどのようにして育まれたのか。

 本書はKOOさんの半生を振り返りつつ、さまざまな経験から得た彼ならではの人生訓が木訥な語り口を活かした文章で綴られている。

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 小学生時代はどちらかというと「引きこもり系」だったKOOさんは、中2でエレキギターと出合い「エレキを弾ける」という自信を得たことから人生が変わり始める。

 高校時代はなりゆきで入部した名門ラグビー部で体育会系のハードなタテ社会を経験し、専門学校時代にふとした好奇心からDJの道へ。月収5万円の下積み時代は、コインランドリーで寝泊まりしてしのいだ日もあったという。結婚後、風営法改正の余波でDJ業界が下火になり、一時は家族を養うために清掃作業員のバイトも経験した。のちに小室哲哉氏と出会いtrf(旧グループ名)として成功するまでは、人知れず苦節の時期を過ごしてきたのだ。

 そんな彼が半生を振り返って「人生ってやっぱり楽しい!」と断言できるのは、「あらゆることに手抜きをせず、真剣に取り組んできた」から。

 仕事が順風満帆ではないとき、こうありたい自分とは違う展開の人生になってしまいそうなときには、どうあればいいのかについて

“とにかくあまり難しく考えないで、来た球を打てばいいんです!”

“でも失敗したら? 大丈夫。何度も失敗してきたボクだから言えることだけど、本人が思ってるほど、失敗なんてたいしたことじゃありません”

“人生はもっと楽しく、気楽に。そして真剣にチャレンジしたら、それでいいんじゃないかとボクは思う。あまり結果を気にせずに”

 と、力強くシンプルなメッセージで語りかける。

 読みすすめるうちに気がつくのは、彼の持論の中に、アドラー心理学やマインドフルネスにも共通する信念が込められていることだ。たとえば「今を楽しむ」「来たものを受け止める」「シンプルよりプレーンに生きる」といったあたりは、自分の心を軽くすることにつなげられる発想だ。

「相手の『本気』には応える」「信用するな! 信頼しろ」「人づてに物を言わない」「信頼にまさる財産はない」などは、良好な人間関係を築くコミュニケーションのロジックとリンクするし、「成功するための準備は200%必要」は、スポーツ心理学における“試合のための心理的準備”に近い。

 人生とは、選択の連続だ。人はさまざまな出来事や局面に直面するたびに「どうするのか」を選択して前に進む。選択が「明日」をつくるし、その結果が自分に返ってくる。いざ選択や対処に迷ったときに、何を指針に考えればよいのか。そのヒントを本書から読み取ることができる。

 KOOさんの場合は、ものごとを正面から素直に受け止めて対処し、結果、削ぎ落された“プレーンな人生観”を体得してきた。そんな彼が発するKOO訓からは人生の荒波を上手に乗り越えるためのエッセンスが見えてくる。深いけれどもライトに軽く読むことができるKOOさんの言葉たちから、あなたの毎日をラクにしてくれるヒントをぜひ見つけてほしい。

文=タニハタ マユミ