VRビジネス成功のカギは? VR開発に挑んだ企業から学ぶ極意

ビジネス

2017/6/21

『VRビジネス成功の法則』(日経産業新聞:編/日本経済新聞出版社)

 いまや新聞やニュースでその名を聞かない日はない「VR(仮想現実)」。昨年は「VR元年」と呼ばれ、ソニーのPlayStation VR、米オキュラスのRift、台湾HTCのViveなど、さまざまなVRデバイスの発売で騒がれた。では、その1年後のいま、VRビジネスの現場はどうなっているのか。

 『VRビジネス成功の法則』(日経産業新聞:編/日本経済新聞出版社)は、VRビジネスの最前線を取材し続けてきた日経新聞の編集部が、VR開発に挑戦した企業の取り組みを再評価した一冊だ。技術者たちへのインタビューからはVRの今後の課題と展望が見えてくる。

■成功のカギは「VR共感力」

 昨年、バンダイナムコエンターテインメントは期間限定でお台場に国内初のVR体験施設をオープンした。事前予約制で、コンテンツ1回あたりの利用料が700~1000円という価格帯にもかかわらず、オープン当初から満員御礼で6ヶ月間で約3万人が訪れた。エグゼクティブプロデューサーの小山順一朗氏によれば、成功のカギは「VR共感力」だ。「VR共感力」とは、現実での実経験を仮想のVR体験に重ねる感性のこと。例えば、地上200メートルの高所に渡された板の上を歩くコンテンツに参加したとび職の男性は、普段から高さに慣れているにもかかわらず、恐怖に立ちすくんでしまった。一方で普通の女子高生が平気で歩いてしまう。現実で本物を知っている人ほど仮想の世界に没入するわけである。

「VR共感力」が低い人には“魔法”をかけてあげるのだという。これから何を体験するのか、何が現れるのかを前もって参加者に教えてしまう。そうすることで頭の中の想像と、それを超えた体験のギャップで参加者により驚きや興奮を与えられるのだ。バンダイナムコに続き、アーケード大手のSEGAやアドアーズなどもVR体験アミューズメント施設を次々とオープンしている。いずれは映画館やカラオケ店のように、何気なくVR体験施設が社会に溶け込んでいるかもしれない。

■「VRならでは」の問題と利点

 業界に先駆け、いち早くVRゲームを発売したゲームメーカーのコロプラ。そのVR開発チームを率いる小林傑氏は、「VRならでは」の難しさを語る。ゲームらしい演出や操作方法を作り込んでいくと、リアリティがなくなり没入感が失われてしまう。そのためゲーム性は抑え、まずはカジュアルに楽しめるゲームを目指した。VRの開発に教科書はない。VR開発で必要なのは、教科書を正確になぞる能力よりも、教科書にない課題と向き合える能力だという。いまからVRコンテンツを開発するとしたら、その成果が認められるのは3~4年後になる。VRの将来性を信じられる人でなければやり遂げるのは難しいという。

 それでもVR開発のメリットは多い。業界を見渡してもVRビジネスの経験者は少ない。だからこそ、どこよりも早くビジネスや開発を進めてノウハウを蓄積できた会社がアドバンテージを得る。関連コストもスマホゲームと同等か、現状ではVRゲームのほうが安い。他社に先行することでVR関連の特許も押さえられる。米国や中国などの投資ファンドが目をつけて市場も急成長している。国内の消費者だけでなく海外のユーザーにも売り込める。メイドインジャパンのVRビジネスが世界を席巻する日も近いかもしれない。

 VRブームを先導しているのはゲーム業界だが、その活用の幅はゲームだけでは収まらない。テスラモーターズは、自動車の生産ラインの設計にVRを取り入れている。東北楽天ゴールデンイーグルスは、VRを対戦チームの研究に使っているという。

 VRの画期的な活用法を発見できれば、一獲千金も夢ではない。VRに夢を抱く人々のゴールドラッシュは始まったばかりなのだ。

文=愛咲優詩