「なんとかしなければ」と考えるより、「楽しいかどうか」と考える

暮らし

公開日:2017/7/8

『ただしい人から、たのしい人へ――そして「ありがとうの人」になる』(小林正観/廣済堂出版)

 ちゃんとしなければいけないと、プレッシャーに押しつぶされそうな思いをしていませんか? 「そうすることが正しい」「~しなければいけない」という思いが、悩みや苦しみをつくり、時として人を追い詰めてしまうことがあります。『ただしい人から、たのしい人へ――そして「ありがとうの人」になる』(小林正観/廣済堂出版)では、正しさに押しつぶされそうになっている人たちに向けて人生がもっとラクに思えるような提案をしています。

 著者である小林正観さんは心学を研究し、全国を講演してまわり、これまでたくさんの人生相談にのってきたそうです。そのなかで著者は、多くの人がなかなか乗り越えられない3つの問題に行き当たったといいます。1つ目は、周りに苦しんでいる人がいるときに、自分がなんとかしてあげなければと思うこと。2つ目は、自分はちゃんと働いて、いろいろなことを守って生きているのに、周りの人はそのように生きていないのではないか、という怒り。3つ目は、子どもや部下などにちゃんと教えなければならない、あるいは自分がいろいろなものを背負っているということだったそうです。この3つに共通することが「正義感」や「使命感」といった正しさであり、正しくという思いがあればあるほど、正しく生きられない自分や他人へ暗い感情を生んでしまうというのです。

 そこで、著者は「正しく生きるよりも、楽しさを優先して考えたらどうですか」と提案しています。それは「正しく生きなくていいよ!」というわけではなく、「こうでなければならない」とか「こうあるべきだ」という正しさの考えにがんじがらめになるのはやめようということ。「自分にとってどういう生き方が楽しいか」を考えて生きるのが、楽な生き方だといいます。それでは楽しい生き方とはどのようなものか?

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いい加減に生きる。
それが、自分にも他人にも
楽で優しくなれる生き方です。

 楽しい生き方とは、喜ばれる生き方であり、その方法のひとつとして、いい加減に生きることが本書の中で紹介されています。著者は若いころ、すべてが正しくないといけないと思い、時間はもちろん、いろいろなルールを守ることにとても厳しく、他人に対しても厳しかったそうです。他人に対して優しくなるためどうしたらいいか一生懸命に考えた結果、最善の方法は自分に甘くなること、自分自身がいい加減になってしまうことだったそうです。自分がいい加減なのに、他人に厳しくいうことはできません。自分に甘いほうが、自分や他人に優しくなれると気が付いたそうです。

 著者である小林正観さんはすでに逝去されていますが、それなりの覚悟を決めてこの本を書いたそうです。それは、正しく生きなくていいということで、多くの人に誤解されるかもしれない気持ちがあったからなんだとか。夢や希望を抱き、使命感をもって生きることは、正しいことで、そうあるべきだと考える人は少なくありません。しかし、時として強い思いや使命感が争いの火種となり、達成できない場合の自己嫌悪につながることもあります。こうあるべきと、正しさをあまりに重視しすぎると、独りよがりな生き方になってしまうこともあるから、本当にそうでなければならないのか立ち止まって考えてみる時間が私たちには必要なのかもしれません。

文=なつめ