江戸時代にもミシュランガイドがあった!? 「格付け」するとよく分かる江戸の歴史

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公開日:2017/7/11

『江戸時代の「格付け」がわかる本』(大石学:監修/洋泉社)

 バラエティ番組では「○○ランキング」といった内容が流行っているが、江戸時代の人たちも「格付け」が大好きだった。名所、神社仏閣、温泉、料理屋のランキングをはじめ、「ヒト(職業)」でさえも順位付けしており、人々はその「格付けされた社会」の中、自分のポジションからはみ出さないよう、ルールを守って暮らしていた。

『江戸時代の「格付け」がわかる本』(大石学:監修/洋泉社)は、そんな「格付け社会」だった江戸を分かりやすく理解するための歴史雑学本だ。

 内容は江戸時代の官位制度について、身分に応じた服装や、職業、家格によって異なった屋敷の表門のこと、藩の大小により違いのある参勤交代の規模など、「順位を決めない徒競走」が行われるような現代ではエグイと感じられるほど、「ランク」によって「何もかも違ってくる」江戸の「決まりごと」が書かれている。

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 こういった知識は時代劇や歴史小説を読む時の参考になるし、周囲からちょっとした「歴史通」に見られることもできる(お酒の席などで、歴史好きの年配の方と仲良くなれるだろう!)。

 ただ、このような武士の「官位」「屋敷」「服装」など、家格による「違い」を紹介している類書は他にも多く出版されているのも事実。だが、本書はそれに加えて「庶民の文化」や「女性のこと」などにも触れられているのがおススメポイントだ。

 江戸時代にもミシュランガイドがあった。それは「見立(みたて)番付」という、料亭のランキング表だ。江戸時代の高級料理屋で最も人気があったのが、浅草の「八百善(やおぜん)」。現存しているこの老舗料亭は、11代将軍の家斉(いえなり)が立ち寄ったという記録も残っているし、大河ドラマにもなった篤姫(あつひめ)も勝海舟を伴って通ったそうだ。その他、深川に構えた「平清(ひらせい)」も錦絵に描かれたほどの人気店だった。

 女性における「格付け」にも触れておくと、「名前」で身分の違いが分かった。女性名については厳しい規制があったわけではなく、基本的には自由だったらしいが、身分における大まかな傾向は存在した。

 まず、宮廷の女性に多いのが二音節・一漢字+子。「定子(ていし/さだこ)」「彰子(しょうし/しょうこ)」などである。武士の大名家は二音節・漢字一字が多い。菊(きく)、松(まつ)、通(つう)といった名前であり、これは下級武士を含む庶民とあまり変わらない。ただ、庶民(武士以外)の名前にはかな二字という場合もあった(いと、あき、いわ等々)。

 武士や庶民が「子」を使ってはいけないという規則はなかったようだが、世間一般では遠慮して使用しなかったようだ。また、結婚や奉公を機会に改名するケースもあるそうなので、江戸人は現代ほど「名前は一生同じが当たり前」という感覚は少なかったのかもしれない。

 この他にも、大奥女中や遊女の格付けなども紹介されているし、「商人」や「町人」のランクなども分かりやすく書かれている。こういった情報は「当時の常識」でありながら、あまり学校の授業では掘り下げない部分なので、日本史の知識を深めたい方にもおススメしたい。

文=雨野裾