社交不安症にもなりうる“大人の人見知り” 克服のための第一歩は…

社会

2017/7/13

『大人の人見知り』(清水栄司/ワニブックス)

 人前で発表をするのが苦手。初対面の相手だとモジモジしてしまう。程度の差こそあれ、このような経験のある人はおそらく少なくないだろうし、自分の気質として「人見知り」を自覚していることだろう。

 かくいうこの記事を担当する僕も、例にもれず。ライターとして、インタビューなどを行うにも心の中ではあたふたしている自分へ、時には嫌気が差す瞬間もある。

 人見知りとは本来、赤ちゃんが母親と他人を区別する「成長の一過程」となる時期を表す言葉だったそうだが、昨今、大人たちの間でもすっかり身近になったと示すのは書籍『大人の人見知り』(清水栄司/ワニブックス)だ。

◎やがては「社交不安症」に……。自分を知るための4つのチェック項目

 精神科医である著者は、大人にとっての人見知りは「社交不安症」の予備軍と考えられると指摘する。

 社交不安症とは、日頃から不安をおぼえ、やがては動悸や赤面、発汗などの身体的な症状が現れてしまう状態。本書では、このような日常生活に支障をきたす症状が6ヶ月以上続く場合には当てはまり、その前提である不安が続く状態を人見知りと定義づけている。

 本書にある、社交不安症のチェック項目も紹介しておこう。ちなみに選択肢はすべて「はい」「いいえ」である。

1)人前で質問に答えたり、発表や演技をしたりという、注目される状況が怖い
2)宴席、会議室、教室など、グループ活動に参加したり、他の人がすでに座っている場所へ行ったりする状況が怖い
3)人前で恥ずかしいことを自分がしてしまい、他人から否定的に評価されてしまうことが怖い
4)以上の項目すべての怖さは度を超えていて、その状況を避けるために、あなたの生活が妨げられていたり、その状況を耐え忍んで、ひどいつらさを感じることが6ヶ月以上続いている

 項目すべてが「はい」に当てはまれば社交不安症、少なくとも1~3の症状を自覚するならその予備軍である人見知りに該当するというわけだ。

◎人見知り克服のための第一歩。5分でできる「こころの練習」

 人見知りを克服するといっても、今この瞬間から見知らぬ人の前で「うぇ~い!」と気さくに話しかけるような、荒療治はなかなか難しい。本書では、著者による人見知りへ繋がりかねない“悪癖”や、身近な小さなことから改善するための“技術”もまとめられているが、その中から、5分間でできるという認知療法のエクササイズ「こころの練習」を紹介していこう。

 まずは深く考え込まず気楽に、自分自身の直感で以下の7つの質問に回答してみてほしい。

1)あなたの悩みやストレスは、何がどうなっていることですか?(50文字程度で記載してください。最初は、大きな悩みでなく、小さな悩みで書きましょう)
2)1の考えを、どのくらい本当だと思っていますか? 0から100までの数字で表してください。
3)1の考えを、どのくらいつらいと感じていますか? 0から100までの数字で表してください。
4)その考えを、反対の内容にしてみましょう。
5)そのように考える具体例(根拠)をふたつ書きましょう。
6)それでは、もう一度考えてみてください。1の考えを、どのくらい本当だと思っていますか? 0から100までの数字で表してください。
7)1の考えを、どのくらいつらいと感じていますか? 0から100までの数字で表してください。

 これらの質問へ順番に答えれば、頭や心の中にひそむ不安を客観的に見つめ直すこともできる。さらに著者は「頭を支配している悩みやストレスの原因は、別の考え方をしてみることで、ずい分と楽になります」とアドバイスする。

 本書を読むと伝わってくるのは、人見知りの背景には他人からの評価を気にしたり、過去の失敗から自信が持てなくなったりしている状態があるのではないかということだ。

 ただ、克服できれば「仕事の生産性が上がったり、私生活の人間関係が楽しめたりする」といったメリットがある一方、裏を返せば、人見知り自体にも不安への感受性が強いというメリットがあり「成し遂げられることも多くあります」と著者はフォローする。

 人見知りは必ずしも短所ではない。自分にとって足りないと思う部分は補いつつ、あくまでも“気質”や“個性”と割り切って付き合うのが気楽になるための近道といえそうだ。

文=カネコシュウヘイ