呼吸を見直せばカラダは変わる。4万人の不調を回復させてきた整体師が教える、“カラダにやさしい呼吸法

健康・美容

公開日:2017/7/20

『すごい呼吸 CDブック 不調がなくなる! ぐっすり眠れる! 体が変わる! 』(森田愛子著/講談社)

 私たちは毎日、何かしらの目的に向けて、追われるように時間をすごしがちだ。朝は職場や学校に行くために小走りに移動し、仕事や授業の間は集中するあまりに、知らず知らずに息をつめていたりする。気分はいつもどこかささくれがちで、空を見上げて深呼吸してリラックス、なんてことは、日常ではほぼしない。

 そんな体にも心にもやさしくない日々に、一服の清涼剤となりそうな呼吸本が発売された。“身体を育てなおす”をコンセプトに、これまで4万人以上に治療を施してきた呼吸整体師の森田愛子氏の最新刊、『すごい呼吸 CDブック 不調がなくなる! ぐっすり眠れる! 体が変わる! 』(森田愛子著/講談社)だ。

 森田氏の呼吸指南は、だるい、体が重い、眠れないといった現代人が抱えがちなマイナー不調に対して、症状の改善から根本的な体質改善まで導くのが特徴だ。本書では、浅くなりがちな現代人の呼吸の質を高めて深くスムーズに息を吸い込むことのできる体に導くレッスンが紹介されており、それらはすべてCDを聞きながら行うつくりになっている。

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 印象的なのは、多くの呼吸本で提唱されているような、特別に考案された“〇〇呼吸法”を学ぶのではなく、あくまで“自分に合った普段の呼吸を探すこと、いつも適切な呼吸ができるようになること”に主眼が置かれていることだ。

 呼吸を行うときも、姿勢よく背筋をピン!と伸ばすのではなく、
“背中は軽くカーブを描き、骨盤も自然に丸める感じで”
「自然な座り方」で行うというのも、とても新鮮だ。森田氏によれば、いい姿勢は疲れて続かなかったり、緊張して逆に体に負担をかけたり、固くなることで息が体の奥まで入っていかずに、浅い呼吸に留まってしまう弊害があるのだそうだ。

 いざCDを聞いてみると、オープニング音楽や書名の紹介もなく、いきなり森田氏の声で実直なガイダンスが始まった。明るくも暗くもなく不思議に淡々としている彼女の声に、ただ身を任せてみる。

 軽く目を閉じて、指示されるがままに順番にエクササイズを行っていく。息を深く吸ったり吐いたりできるようになるための練習をダイレクトに行うのではなく、体のどこかを“意識”したり“感じる”ことを、ひたすら積み上げていくような印象だ。

 たとえば「深呼吸」を行うにしても
吐くときは、「頭、背骨がある、ある、そこにある」とずっと思いながら
 行うなど、どこかマインドフルネスのようだったりする。そして、ひとつエクササイズを行うごとに、だんだんとゆるやかに眠気がつのってくる。体の温度が少しづつ上昇し、ほわっとしただる重い感覚に包まれていく。

 床にあおむけになって行う「腹式呼吸法」や、力が抜けた状態を体に覚えさせる「体感覚を開くワーク」、緊張を解きたいときに効果的な「うずくまり呼吸法」と順番に行い、ラストは体を緩めるスイッチを入れる「肩を開くセルフケア」を実践。これはいわば“神経のストレッチ”になるそうで、確かに行っている間中、腕にジ〜〜ンとにぶい刺激を感じ続け、終了後には体からどっと力が抜けて緩み、入眠前のようなリラックス感が訪れた。解放感の中で深呼吸してみると、確かに最初と比べて楽に深く息を吸えている自分に気がついた。

 じれったいぐらいにスローなテンポで自分本来の呼吸を意識したり、体や首をひねったり、体を緩めるスイッチを入れていくうちに、体の中心から末端へ、呼吸にのせてゆっくりと血液や体液が循環し始め、そのことが自然治癒力を引き出すのだという。本来の深い呼吸とは“全身の巡りを良くして体の治癒力を高めていくもの”だという森田氏の言葉を意識しながら行うと、よりいっそう効果が高まりそうだ。

1 呼吸法やワークによって、深い呼吸ができるようになる

2 一日約3万回行っている呼吸の質が変わる、体の動きも変わる

3 ただ生きているだけで循環する体ができあがる

4 不調の芽が出なくなる、心が落ち着く

5 心身のさまざまな不調、不具合が消えていく

 ちなみに、エクササイズは6つすべてを行う必要はなく、2つでも3つでも、ひとつだけでOK。とにかく好きなものを好きなだけ、できる範囲で行えばよいという気楽さもいい。最終的にはCDを聞かなくても、自然な姿勢で深い呼吸ができるようになることを目指して、毎日続けることがなにより大切。そのようにして本書にあるレッスンを行うことで、不具合のない循環する体に導かれていく。

 大切なのは、すぐに効果や結果を求めようとせずに、まずは自分の体と向き合って呼吸を感じる時間をもつこと。自分自身の現状を把握することに重点をおく。感じ方には個人差があるが、目安として1か月ほどで徐々に正しい呼吸が身に付き、それにともない体のほうにも変化が訪れるという。実際に著者の森田氏自身も、呼吸を見直した結果、循環や代謝がよくなるだけでなく、「瘦せた」「表情が変わった」「切羽詰まっている感じが抜けた」などと、周囲の人もその変化に気づいて言葉をかけてきたというから、興味深い。

 自然で深い呼吸ができるようになることで、私たちは自分の心身の現状を把握し、楽にいられたり不調を感じにくくなる感覚が手に入る。1日の中でたった数分間、自分にやさしくする時間をつくることで、あなたの未来はやさしいものに変わってくるかもしれない。

文=タニハタマユミ