子どもが言うことを聞いてくれない…。悩めるママ・パパに贈る『子育てを元気にすることば』

出産・子育て

公開日:2017/7/25

『子育てを元気にすることば ‐ママ・パパ・保育者へ。』(大豆生田 啓友/エイデル研究所)

 誰もがちょっと探すとさまざまな育児情報を入手できる。便利な反面、情報の取捨選択が難しい。実際に育児をしてみると、誰にとってもベストな答えというものはそうそう無いことがわかる。育児の答えは、親が自分で見つけていくしかない。

 そんな育児に追われる親に響く言葉が、『子育てを元気にすることば ‐ママ・パパ・保育者へ。』(大豆生田 /エイデル研究所)にぎっしりと詰め込まれている。保育雑誌や育児書などでの露出が多い著者・大豆生田 啓友氏。しかし、自身の育児では悩みが絶えなかったと告白している。

子どもの夜泣きにイライラして、「うるさい」と叫んでしまったり、「そんなに車の中でケンカするのなら、降ろすぞ」と言って、車から降ろそうとしたり…。北海道で子どもの置き去り事件があった時、他人事ではないと思いました。

 だからこそ、育児に悩む親の気持ちがわかるという。本書は、氏を含むそんな親を支える古今東西の「言葉」が数多く収録されている。

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 そのうちの4つを紹介したい。

まだ起こっていない未来を先取りして心配しないこと。(中略)いま与えられている現在を感謝して受け、充実して生きるとき、未来はその中から思いがけないところへと開かれていく。
(第2章 子育てに悩むあなたへのことば。より)
津守真『愛育の庭から 子どもと歩み学ぶ日々』愛育養護学校

 大豆生田氏は「子どもは本来スローで“現在”を生きる存在であり、その子らしい現在を充実させることで、結果的に一歩先の豊かな未来を生み出していく」と解説する。

外には雨が降り続けてる。部屋の内は笑い声で晴れわたっている。窓硝子はぬれて曇っているが、子どもたちの顔はみんな明るく輝いている。外からの光でなく、内からの光である。天の太陽は雲につつまれる日があっても、ここの小さな太陽たちは、いつだって好天気だ。
(第3章 子どもの本質をひも解くことば。より)
倉橋惣三『育ての心(上)』63頁、フレーベル館、2008年

 氏が敬愛する、日本の幼児教育の父と呼ばれる倉橋惣三の言葉。大人は雨をネガティブに捉える。しかし、子どもは雨であろうといつも元気で笑顔にあふれており、大人はそんな子どもと共にあることで希望をもらうことができる、と氏は解説する。

子どもたちの遊びも、学問と言われる高尚な精神の営みも、同じようにカオスからコスモスをつくり上げる作業というところで共通するものなのである。
(第4章 子どもを見つめる保育者のことば。より)
汐見稔幸『本当は怖い小学一年生』146頁、ポプラ社、2013年

 子どもが本気で遊びに没頭することは、カオス(混沌)からコスモス(秩序)を生み出すということ。氏は、土と水から試行錯誤して完成させる泥団子遊びで、その原理を補足解説している。

子ども時代―。昔から『アメリカ的生きかた』であれほど大切にされてきた『子ども時代』という概念が、私たちのつくりあげてきた社会のなかで消えかかっている。今の子どもたちは、本人も望まず、周囲もそのつもりなどないのに、恐ろしいほどのストレスにつぶされそうになっている。
(第5章 子どもと社会を導くことば。より)
デイヴィッド・エルカインド、戸根由紀恵 訳『急がされる子どもたち』26頁、紀伊國屋書店、2002年

 アメリカの児童心理学者、デイヴィッド・エルカインドの言葉。氏は、この状況は日本でも同じで、子どもにとっての権利でもある「子ども時代」を保障できる社会にすることが急務である、と解説している。

 大豆生田氏が精選した言葉は、どれもポジティブで、意味が深く、子どもを肯定的に捉えられるものばかり。育児に悩む親に響くはずだ。

文=ルートつつみ