【創作者必携】物語の世界観を創るには? 見えるもの、聴こえるもの、匂い、味、質感…場面設定のヒント探しとなる辞典

文芸・カルチャー

2017/8/28

『場面設定類語辞典』(アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ:著、小山健:イラスト、滝本杏奈:訳/フィルムアート社)

 創作者を目指す人にとって、場面設定の作り込みは避けて通れない作業だ。場面を描くためには、表現力と共に、観察眼も必要となってくる。一朝一夕では身に着けられない技術だ。

 創作者のための類語辞典シリーズ第4弾の『場面設定類語辞典』(アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ:著、小山健:イラスト、滝本杏奈:訳/フィルムアート社)は、場面設定の作り込みを苦手としている創作者の、大きな手助けとなる一冊。類語辞典は、似た意味を持つ言葉がまとめられた辞典だが、本書はタイトルどおり「場面設定」に特化した類語辞典。「郊外編」と「都市編」を合わせて全225場面ごとに、「見えるもの」「聴こえるもの」「匂い」「味」「質感とそこから受ける感覚」「物語が展開する状況や出来事」「登場人物」、さらには「設定の注意点とヒント」「例文」などの項目別に、場面に関連する言葉がズラッと列記されている。

 海外の作家による書なので、日本では違和感がある言葉も散見されるが、読者を物語に引き込むためのヒント探しには申し分ない。場面にはリアリティが求められる。夏休みに海や山に行った人なら、その体験をもとに、本書の力も借りて場面設定をしてみるのもいいかもしれない。本書の「海」(郊外編>自然と地形)には、次のような言葉が記されている。

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(本書P.228・229より)

●見えるもの
・浅瀬の底
・半分埋まった貝殻
・光の筋があちこちに降り注ぐ日当たりのよい箇所と暗がり
・潮の流れに漂う海藻
・最近捨てられたゴミ(タイヤ、生ゴミ、瓶、缶)

●聴こえるもの
・チューブを通して大きく聴こえる呼吸音
・耳に伝わる自分の鼓動
・背負われた装備から「シューッ」と音を立てて出る空気
・あたりの水をかき分けるために足ヒレで「シュッ」と蹴る
・水がボートの船体に打ち寄せる音

●匂い
・密封された空気
・ゴム
・マスクの防水剤
・汗
・日焼け止め

●味
(この場面では特に無し)

●質感とそこから受ける感覚
・濡れたクロロプレンゴム
・頬にあたって跳ね返る気泡
・頭皮から髪の毛が持ち上がり水中で波打つ
・砂の中に沈めたりサンゴや岩をかすめる指
・口にマウスピースをはめたときのぎこちなさ

●物語が展開する状況や出来事
・溺れかける
・仲間と離ればなれになる
・危険な海洋生物(サメ、クラゲ、ウナギ、エイ、バラクーダ)
・マスクに水が入る
・水中の潮の流れが速く、ツアーグループから引き離される

●登場人物
・海洋生物学者
・スキューバダイビングをする人
・シュノーケリングをする人
・水中写真家や映像作家

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 これは海の項目2ページに記載されている言葉のごく一部だが、頭の中に海の風景が少しは広がったのではないだろうか。

 本書はAmazon「本」総合ランキング1位(17/5/11〜)を獲得しており、小説家の有栖川有栖氏、ライターの武田砂鉄氏も、幅広い創作者に向けて推薦している。

 イメージ力が豊かな人なら、読むだけでも日常的あるいは非日常的な場面を追体験できそう。かなり厚い本だが、創作に関係する人ならぜひ側に置きたい一冊だ。

文=ルートつつみ