グーグルが見つけた、生産性の高いチームの「規範」とは?

ビジネス

更新日:2017/9/26

『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』(鈴木 晶:訳/講談社)

 仕事に追われ、「1日が24時間では足りない」と嘆く人はきっといくら時間があろうとも「足りない足りない」と喚き続けるに違いない。「時間がない」と騒ぐ人が上げなければならないのは、何よりも生産性だ。チャールズ・デュヒッグ氏著『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』(鈴木 晶:訳/講談社)は、生産性の高い人々の仕事の取り組み方の秘密に迫った一冊。神経学者、心理学者、政府高官、海兵隊将軍など、あらゆる人にインタビューしたデュヒッグ氏は生産性を高めるのに役立つ秘密を見出したという。その中からすぐにでも活用できそうなものをいくつかご紹介するとしよう。

■新兵の成績が20%超UP! やる気を引き出したブートキャンプの改革

 やる気の出ないまま仕事に取り組んでも、生産性が上がらないのは当然だ。チャールズ・C・クルーラック海兵隊総司令官は、心理学者や精神科医らの協力のもと、2010年、新兵たちのやる気アップのため、訓練プログラム改革を行った。元々、海兵隊には、知力も体力も申し分ない新兵はいたが、「最低限のことだけこなせばいい」と考える若者も少なくなかった。そこで、クルーラック氏は、厳しい訓練の最中に、新兵たちに互いに「なぜこんなことをしているんだ?」ということを問わせるようにした。難しい課題であっても、自分が選択したのだと思えば、ずっと容易になる。この改革以来、新兵の定着率と成績はどちらも20%以上上がったのだという。

 自分が何のためにしているのか、何の役に立つのか、暗中模索の状態で仕事に取り組んでも効率は上がらない。つねに自分に対して「なぜこの仕事に取り組んでいるのか」と問い続けることがやる気UPの鍵となるのだ。

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■グーグルが見つけた、成功するチームの「規範」とは?

 仕事は一人だけでするものではない。時にチームとしての力も重要になる。一体どのようなチームが成功をなし得るのだろう。グーグル社は社員の生産性向上計画を「プロジェクト・アリストテレス」と名付け、成績のよいチームとそうでないチームの差を分析した。その結果によると、成功するチームとなる秘訣は、チームメンバーの全員が「メンバーは自分の意見を聞いてくれる」と確信していることだという。リーダーは、議論の時にチームメイトの話を遮らず、ちゃんと話を聞いていることを示すために誰かの話が終わったら、それを要約する。メンバー全員が少なくとも一回発言するまで会議を終えず、公平に発言させる。そんなチームが理想のチームだというのだから、自分たちのチームもこれに近づけられるように努力したいものだ。

■経験豊かな敏腕看護師に学ぶ、注意力UP術

 同じ仕事をしても、注意力のある人とない人とではアウトプットが異なる。クライン・アソシエイツというコンサルティング会社の心理学グループは、注意力の有無に関する調査を行った。そのなかでインタビューを受けた新生児集中治療室の看護師は、データ上異変のない赤ん坊のささやかな体調変化をも敏感に感じ取る能力があった。彼女の中には、「健康的な赤ん坊はこうあるべきだ」というイメージがあり、そのイメージと合わない場合、ささいなことでも異変を感じ取っていたようだ。彼女のような注意力のある人には、共通点がある。彼らのなかには、「こう見えるべきだ」というイメージがあり、経験をもとに、自分で自分にストーリーを語る。彼らは他の人々よりも未来をより鮮明に視覚化している。そうやって習慣的に未来を予想することが注意力UPにつながり、仕事の質を変えるのだ。

 その他にも、この本には、GE(ゼネラル・エレクトリック)社員を変えた「ToDoリスト」の作り方や、『アナと雪の女王』が「イノベーション」を実現した理由など、仕事をクオリティ高く、かつ、効率的にこなす秘訣が満載。自分の効率の悪さに日々悩んでいる人も、部下やチームをまとめる立場にある人にもこの本は、あなたの仕事ライフを変えてくれるに違いない1冊だ。

文=アサトーミナミ