老舗和菓子屋で繰り広げられるドロドロすぎる愛憎劇から目が離せない! 夫は世界一憎い男、怖すぎる女将、ラスボス感満載の大旦那…『私たちはどうかしている』

マンガ

更新日:2017/10/3

『私たちはどうかしている』(安藤なつみ/講談社/ BE・LOVE連載中)

 婚礼衣装で挑発的なまなざしを送りあう男女が表紙のマンガ『私たちはどうかしている』(安藤なつみ/講談社/ BE・LOVE連載中)。タイトルとあわせて、恋に盲目的な二人の駆け引き的なラブコメかと思いきや、第一話から血みどろの殺人事件を発端とする本作。母に殺人者の汚名をきせた椿のもとへ、素性を隠したまま輿入れする主人公・七桜の、謎に満ちた因縁の恋物語だ。

 和菓子職人の母とともに、老舗の和菓子屋・光月庵に住み込んでいた幼き日の七桜。彼女を「さくら」と呼ぶ、光月庵の一人息子・椿とは、立場は違えど心を寄せ合う仲だった。母と椿、ふたりの勧めで和菓子づくりの喜びに目覚めた七桜だったが、幸せな日々は、椿の父が何者かに殺されたことで崩れ去る。犯人として椿が告発したのは、七桜の母親だったからだ。無実の主張もむなしく、裁判中に命を落とした母。以来、血の色と同じ赤が苦手となってしまった七桜は、和菓子職人として致命的なハンデを背負いながら、豊かで繊細な発想とセンスで腕を磨き、ついに光月庵の跡継ぎ・椿と和菓子対決をするレベルにまでたどりつく。そこで互角の腕を見せた彼女は、七桜=さくらと気づかない椿に、打算的な結婚を申し込まれるのである。


 七桜は決して、復讐のために生きてきたわけではない。母の無念を思いながら、それでも前を向いて歩いてきた。だが、今になって届いた母からの「何もやっていない」という手紙。椿との再会。これを運命といわずしてなんというだろう。

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 真実を知るため、結婚を利用して敵陣に乗り込む彼女の決意と想いの強さ、そして冷え切った光月庵に隠されたさまざまなお家事情、幼き日の笑顔を失ってしまった椿の苦悩が美しいイラストとともにミステリー仕立てで描かれ、あっというまに引き込まれる。ただ復讐心に燃えるだけでなく、和菓子職人として誇りをもち努力し続ける七桜が、凛とした魅力にあふれているからこそ、救いを願って読者もページをめくる。彼女の強さが、家と事件に縛られている椿を解放してくれることも。


 進展をみせる恋模様にくわえ、腹に一物も二物も抱えていそうな椿の母、ラスボス感満載の椿の祖父にかこまれた七桜は、ついに命を狙われ、物語は3巻で大きく動き出す。なぜか事情を知って素性隠しの手助けをしてくれる謎の男は誰なのか。七桜=さくらと知っても、椿は受け入れてくれるのか。「どうかしている」二人が行きつく先を、今後もハラハラさせられながら追っていきたい。

文=立花もも