家族も記憶も失くしてしまった16歳の少年が出会ったのは…天使と悪魔!? 『ブラッディ+メアリー』のサマミヤアカザ最新作『バラッド×オペラ』

マンガ

公開日:2017/9/23

『バラッド×オペラ』(サマミヤアカザ/KADOKAWA)

 16歳の遥人(はると)はネコの落下が原因で死んでしまう…という驚きの展開ではじまるのは、『ブラッディ+メアリー』で大人気サマミヤアカザ先生の最新作『バラッド×オペラ』(サマミヤアカザ/KADOKAWA)。待望の電子書籍が9月23日(土)に配信された。

 遥人には記憶がない。半年前の火事で両親と妹、そして自分の記憶を失くしてしまったからだ。世の中は、そんな遥人のことを「悲劇の少年」と同情するが、遥人自身は記憶がないため、悲しさもない。そんな状況に、遥人は不安と絶望を抱えながら、無気力に生きていた。

 ある時、遥人は、天使が投げたネコ(正体は悪魔)が空から落下してきたことで、死亡してしまう。天使と悪魔は「若くて」「すぐ死ぬ運命の」人間を「死神」にするべく、下界に降り立っていた。運悪く(天使と悪魔にとっては「運よく」)死んでしまった遥人は、死神になることを提案される。
 さらに、死神になれば火事が起こる前、つまり、記憶を失う前に生き返ることができるかもしれないと告げられ、悩んだ結果、わずかな「希望」を信じ、遥人は死神になることを決意。

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「オレは死んで また生きるために死神になった」

 本作は、天使と悪魔と死神が「三位一体」となり、天界の牢獄から逃げてしまった「罪人」の魂を回収する……という、あり得ない展開に巻き込まれた青年が、「死んでから」生きる意味を探していく物語だ。

 本作、とにかく作画がキレイ。まるでイラスト集を見ているかのような満足感があった。さらには、カッコいい男性しか出てこない(今のところ)。天使のシロは親しみやすく包容力のある王子様系正統派イケメンで、悪魔のクロは脱力系クールでちょっと色気のある個性派イケメン……サマミヤ先生の繊細なタッチの線画と相まって、優美な絵柄が眼福すぎます……。

 物語は、まだ謎の部分が多い。「罪人」が牢獄から逃げてしまった理由も分からないし、シロやクロの本当の名前も定かではない。(この名前は遥人が仮に付けたもの)。さらに、二人の顔見知りの悪魔は遥人のことを「子山羊」(スケープゴート/生贄の山羊)と呼んでいる……本作にはまだまだ、多くの秘密が隠されているようだ。

「生きる意味」を得るために、一度死んで「死神」になった遥人が、これからどのような苦難に立ち向かい、成長していくのか。失った記憶を再び取り戻すことができるのか。遥人と、そして「罪人」の魂を回収する役目を担ったシロとクロ。三人の活躍に、今後も目が離せない!

文=雨野裾