52歳元アフロ記者の“超地味メシ”は、1食200円、調理時間10分の「ワンパターンごはん」?

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公開日:2017/9/23

『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(稲垣えみ子/マガジンハウス)

 52歳、アフロヘアの著者。某大手新聞社を退職した今は、夫なし、子なしで自由を謳歌する毎日だ。そんな著者が退職してから最も変わったことは、1日3回食べる「メシ・汁•漬物」のワンパターンなごはんだという。しかもキッチンに冷蔵庫はなく、一口コンロで作る調理時間はわずか10分、一食200円だというから驚きだ。そんな超がつくほどの地味メシのおいしさと、その作り方を紹介するのが『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(稲垣えみ子/マガジンハウス)だ。

 「え、つまんないって? 食べる楽しみがなくなる?(中略)自分で言うのもなんですけど、この『超地味メシ』が走って家に帰りたくなるほどウマいんだ! いや冗談じゃなくて」と、冒頭から著者が力説する本書は、これまで誰もが“ふつう”に思っていた食の概念が変わる衝撃の事実が満載だ。

 例えば、「なぜ毎日違うものを食べなきゃいけないのか」のページでは、ごはん、味噌汁、漬物、のり、干物のように、代わり映えしない旅館の朝食への満足感を取り上げ、「豪華なものは飽きるのだ。つまりは、『美味しすぎるもの』は飽きるのである」とバッサリ。ご馳走からは程遠いような地味メシ生活にシフトすることで、今日のごはんに悩むという無限ループから脱出し、日々、食材のおいしさを味わい尽くすという贅沢が堪能できるという。

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 また「考えるな、感じろ」のページでは、シンプルに暮らすための物の断捨離と同じように、食も断捨離して地味メシにすることで、「美味しいものとはもしかして、どこかにあるものなんじゃなくて、すでに自分の中にあるものなんじゃないか」ということに改めて気づくようになるという。だからこそ、著者はワンパターンごはんの毎日が「質素なものの中に無限の世界がある。それが私のごちそうなのです」という究極の結論にたどり着いた。

 とはいうものの、誰もがすぐに毎日の食事に無限の世界を感じることもできないだろうし、そう簡単に冷蔵庫を手放すことができるわけでもない。

 そんな人に向けて、本書には「こんなんでもアリ」と著者がすすめるイナガキ流「メシ・汁・漬物」の作り方がある。炊飯器がなくても鍋でごはんを炊く方法や、1分味噌汁の作り方、さらには“腸美人”になるぬか床の扱い方などが紹介されている。食のプロではない著者だからこそ、その作り方は読みながらホッとできるようなものばかり。これなら、料理ビギナーでも安心して挑戦できるにちがいない。

 また、「激安・御三家」と著者がイチオシする旬の野菜リストを眺めるのもいい。旬の野菜を存分に活かせば、一食200円で家計も節約できるのも納得できるだろう。

 あとがきには、「料理は自由への扉だ。だから自分で自分の人生を歩きたければ、誰もが料理をするべきなのである。男も、女も、子供も。自分で料理をする力を失ってはならない。それは自らの自由を投げ捨てる行為である」とある。

 調理器具や調味料に至るまで、すべてを断捨離した結果生み出された究極のおいしさは、果たしていかに? 毎日の料理に奔走する働くお母さんや、「食べること」「作ること」に苦しむ人にこそ、食の自由化宣言とも言える本書を届けたい。

文=富田チヤコ