えっ!アニメ化!?  書店員のイメージがガラッと変わる話題作『ガイコツ書店員 本田さん』

マンガ・アニメ

2017/9/27

『ガイコツ書店員 本田さん』(本田/KADOKAWA)

 学生時代、1年間ほど書店でアルバイトをしたことがあった。サブカルの聖地と呼ばれる場所の一画にある中型の書店。とにかくコミック売り場が大にぎわいで、いつも担当の社員さんが四苦八苦していた姿が印象に残っている(ちなみに私はというと、専門書コーナーでひたすら返品作業ばかりしていた思い出しかない)。

 2015年8月よりジーンピクシブで連載中の『ガイコツ書店員 本田さん』(本田/KADOKAWA)を読んでいると、当時のことを思い出して「あったあった!」と共感してしまう。本作はガイコツ姿のリアル書店員・本田さん(現在はすでに退職)が、コミック売り場で悪戦苦闘する日々を描いている。先日めでたくアニメ化されることが発表され、9月27日には最新刊3巻の電子書籍が配信された。

 本田さんが働いているのはおそらく大型書店。アーマー係長やカミブクロ先輩など、同じコミック担当のユニークな同僚たちと業務にいそしむ様子がコミカルに描かれている。

 さすが実体験に基づいているだけあって、それぞれのエピソードはインパクト満点。いきなり第1巻の冒頭から衝撃的な体験談をぶっこんできた。ハリウッド俳優みたいなイケメンのおじ様が「(英語で)こういうマンガ探しているんだ」とスマホを取り出すと、触手にまみれた二次元キャラ(♂)を描いた同人誌の画像が……。私なら間違いなくその場でパニックになってしまいそうだ。

「○○っていう本はありますか?」。書店でよく見かける、いかにもありふれたやり取りだが、この○○に当てはまる本のタイトル次第で現場が修羅場に変わることもある。在庫を切らして客に悪態をつかれたり、特典の内容が違うと怒鳴られたり、あるはずの本が見つからなくて困ったり……。
 しかも書店員には在庫管理という大切な仕事もあって、追加発注や返本作業を行ったり、版元の営業マンや取次とコミュニケーションを取ったりしながら、店内の在庫状況を常にチェックしなくてはいけない。“知的”“ひ弱そう”“ヒマそう”などといったイメージを持たれやすい書店員だが、実際は本を運ぶという力作業が多く、かなりハードな一面もある。

 第3巻でも、新刊の“売れ筋”と“死に筋(簡単に言うと売れ筋の対義語。一定期間一冊も売り上げがないと出版社へ戻される)にまつわる悲喜こもごもや、キラキラと目を輝かせながらレジに本を持ってくる子供(でもお金が足りない)、書店員に向いていそうな性格など、多彩なエピソードが登場。どれも書店員の仕事を知らなくても楽しめる内容で、「そうだったのか」と新たな一面を知ることもできる。また、作者が独断と偏見で描いたという「版元別棚運営雑感(略:大変そうだなの気持ち)」も妙に生々しくて納得。毎月大量の新刊が発売する大手出版社の在庫管理はどう考えても地獄だ。最後にKADOKAWAがオチに使われているところも面白い。

 ちなみに私がアルバイトしていた時は、客からストーカー被害に遭って警察沙汰になるスタッフもいた。作者は面白おかしく描いているが、実際の現場はもっと大変なエピソードもあったに違いない。でも、困っている客の手助けをしてお礼を言われたら嬉しいし、自分の判断で多く入荷した本が売れたりしたらガッツポーズをしたくなる。自らの仕事に誇りや充実感を味わえる瞬間でもある。書店のメカニズムや裏事情を知りたい方だけでなく、すべての社会人が共感できるお仕事マンガとして、広く読まれてほしい作品だ。

文=小松良介