サンドウィッチマン、TKO…ロクな飯は食えないし借金は当たり前! 壮絶すぎる芸人たちの貧乏エピソード

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更新日:2019/5/30

『芸人貧乏物語』(松野大介/講談社)

 テレビでよく見かける売れっ子芸人。しかし昔は仕事がなくて貧乏に苦しんでいたという話もたくさん聞く。『芸人貧乏物語』(松野大介/講談社)は、人気中堅芸人の貧乏エピソードを取材し、紹介している1冊だ。

■サンドウィッチマン 伊達みきお

 実力派お笑いコンビのサンドウィッチマン。2007年にM-1で優勝するまでの10年間は相当な貧乏生活をしていたようだ。ツッコミ担当の伊達みきおさんの貧乏エピソードをご紹介しよう。

 売れるまで2人は、天井にクモの巣があり、ゴキブリが出て、ネズミは出るしフンも落ちている築20年の木造アパートで一緒に住んでいた。ある日、伊達さんが米を炊こうと米びつを見ると、黒い米が混じっている。「富澤が五穀米を買って混ぜたのか」と思い、お米をといでいると、黒い米が溶けて水が黒ずんでしまった。ここで伊達さんは「うわ! ネズミのフンだ!」と気づいたそうだ。なんという貧乏エピソードだろうか。

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 まともな家に暮らすためバイトで金を貯めればいいのだが、肉体労働で稼いだ日当9000円はパチンコで溶かしてしまう日々。「勝てば次の日はバイトに行かなくていい、負ければ何も食わずに明日もバイト」というイチかバチかの勝負をして負け続け、生活費がなくなって消費者金融で計250万円の借金をしたそうだ。それでも腹は減るので、業務スーパーで2キロ200円のモヤシを買い、毎日モヤシ炒めやモヤシ丼を食べてしのいでいたとか。正確無比なツッコミを誇る伊達さんだが、ブレイクするまでの人生は型破りにもほどがあった。

■タイムマシーン3号

 M-1やキングオブコントにも出場経験のあるタイムマシーン3号。筆者が個人的に好きな芸人さんだ。彼らも芸人を始めた頃は超貧乏だったそう。

 ボケの関さんは、1週間で食費が1000円しか使えないとき、そうめんをパンパンに膨れるまで茹でて食べていた。一方、ツッコミの山本さんはスーパーで無料配布している牛脂を持ち帰り、炒めても溶け残る固形のやつにしょう油をかけて食べていたという。考えられない貧乏飯だ……。さらに関さんは、気になる女の子にねずみ講で騙されてサラ金で借金をしたり、交通事故に遭って保険金と見舞金をゲットしたり、妹と住んでいたマンションが火事になって保険金が下りたり、お笑い芸人でないと笑えないような過去も持っている。悲惨な事故に見舞われてもお金が入ってきたので「“バイトするな、お笑い頑張れ”と言われている気がした」と語る関さんの根性はすさまじい。そりゃ面白いはずだ。

■コウメ太夫

 『エンタの神様』で大ブレイクした女形芸人コウメ太夫。コンビを組んで売れっ子芸人を目指すもなかなかブレイクできず、30歳を過ぎるまで荻窪の実家に住んでいた。しかし「いい加減自立しなきゃ!」と思い、埼玉の東松山にある家賃2万円のアパートへ引っ越す。

 だが、その家賃さえ払えなかったので、アパートを借りた不動産屋にバイトの相談をして、アパートの周りの草を抜く仕事にありついた。1日かけて6000円を稼げたものの、やはり生活は苦しく、インスタントラーメンの粉末スープにご飯を入れただけの「つゆご飯」を食べてしのいでいたそうだ。この時期、つらく寂しい思いを抱えて過ごしていたという。切ない話だ。

 事務所のネタ見せでは、毎回女形の着物を着て白塗りして、マネージャーや作家にネタを披露していた。ある作家に「こんなのダメだよ!面白くない!」と言われ、やめようかと思った日もあった。しかし別の作家に「裏声でやってみれば?」という助言をもらい、言われたように事務所のライブで「チャンチャララ~」「チクショー!」を裏声でやり通したら、たまたま見に来ていた『エンタの神様』のスタッフの目に留まり、ブレイクを果たしたという。「チクショー!」な日々を過ごしても、負けずに信念を貫き通し続けた結果が実った瞬間だった。

■TKO 木本武宏

 芸人は一度ブレイクしても安心できない。その後も安定して仕事を得ないと、あっという間に貧乏に逆戻りしてしまう。TKOはまさにその典型例だ。

 だが、木本さんは仕事がなくなっても後輩にメシをおごったり、結婚をしたり、お金を湯水のように使ったので、あっという間に借金を抱えてしまった。その額400万円。金がないのでお嫁さんと暮らすアパートには家具がなく、仕方なく木本さんは手作りをし始めたそうだ。近所のホームセンターに通い、売り物にならない木材をもらって、家具作りに挑戦する日々。ホームセンターでT字にする切り方や組み立て方を観察していると、そのうち作業するおじさんに教えてもらうようになった。やがて靴箱、ベッド、机などを作れるほど上達すると、「今度、俺にも作ってや」と頼んでくる人が現れた。そんな人たちに3000円で手作り家具を提供し、得たお金はすぐにキャッシング返済。木本さんは本書の取材に「芸は身を助けるですね」と笑って話している。

 本書を読み通して感じるのは、どんなに辛い貧乏経験にも負けなかった芸人さんの前向きさや根性だ。今がどんなに辛くても、大好きなお笑いのため、ひたむきに毎日を生きるエピソードが本書にはつまっていた。今、まさに辛い日々を過ごしている読者がいるならば、ぜひ本書を手にとってほしい。きっと救われる気持ちになったり、ちょっぴり前向きになれたりするはずだ。

文=いのうえゆきひろ

【お詫び】記事内容に一部誤りがあり、記事公開後に訂正致しました。