「コミュニケーションが苦手」「こだわりが強い」・・・発達障害は”治す”ものではない――親が”その子らしさ”を丸ごと受けとめるには?

出産・子育て

2017/9/30

『自閉症スペクトラムのある子を理解して育てる本』(監修:田中哲、藤原里美(東京都立小児総合医療センター)/学研プラス)

「あれ? うちの子ちょっと他の子と違う?」と気になりはじめると、自分の子どもができないことばかり目につきやすいもの。具体的に、「人とのかかわりやコミュニケーションが苦手」「興味の偏りやこだわりが強い」「感覚が敏感(鈍感)で体の動きが不器用」といった様子が気になる場合、自閉症スペクトラム(ASD)の特性があるかもしれない。

 しかし、発達障害は病気ではないため“治す”ものではない。『自閉症スペクトラムのある子を理解して育てる本』(学研プラス)の監修者で、東京都小児総合医療センター副院長の田中哲先生は、「“自閉症スペクトラムである”ことと“その子らしさ”は分けることができません」と明言している。つまり親に求められるのは、自閉症スペクトラムという特性を持った我が子を丸ごと受けとめること。そして、その子ができないことを気に病むのではなく、できることや得意なことを上手く生活に取り入れ、生きづらさを少しでも軽減して発達を促してあげることだ。

■注意したい「二次障害」

 本書は、そのために必要なアドバイスが充実している。まず、子どもの平均的な発達プロセスと気になる姿を比較できる年齢別一覧表で、我が子の発達の状態を振り返ってみよう。次に、先述した3つの特性の具体例と説明を理解したうえで、親が肝に命じておきたいのは、ASDが原因で周囲から非難されて心が傷つき、自信をなくし、自分を責めて二次的な問題を引き起こす「二次障害」を予防することだ。不眠、食欲不振、うつ、不登校、引きこもり、暴力、暴言といった心身や行動面の問題などの症状として表れることもあり、対応や支援が進まなくなる悪循環に陥りやすくなる。そうならないためには、子どもを決して否定せず「自己肯定感」を育てることを忘れてはいけない。

 では、我が子にASDがある場合、家庭や学校ではどんなサポートが必要なのだろうか? 本書にある10のポイント別対処法は、「ASDの特性にしっくりくる“かかわりの押さえどころ”」や、逆にやってはいけない「これはNG!」例が網羅されており、どれもすぐに実践できる。

■子どものタイプにあわせた対処法

 例えば、強い不安を感じやすい特性のある子には、一人で落ち着きを取り戻す秘密基地のような「マイスペース」を間仕切りや段ボールで作ってあげる。子どもが嫌なことや怖がることを無理強いしたり我慢させたりしない。言葉の理解が難しい子には、「ちゃんと」「早く」といった抽象的な言葉や「これ、それ」などの「こそあど」言葉、否定形の言葉は使わず、「何を、何時に、どこに、どうする」といった具体的な言葉でゆっくり伝える。話を聞いて理解することが苦手な子には、絵や写真で伝える。変化に強い不安を感じる子には、予定の変更を事前に伝えて心の準備をしてもらう。

 ほかにも子どもから発信する力の育て方や、得意なことや興味を生かしてやる気を引き出す方法、自分でできることを増やすサポートの仕方など、「そうすればいいんだ!」と、読めば読むほど親もやる気がわいてくる。

 乳幼児期、児童期、思春期、青年期の年代別子育てのポイントも紹介。園や学校で起きやすい問題と相談できる専門家や窓口、進路の選択肢、家庭でのかかわり方がわかる。最終章では、12人の特性のある子どもたちの事例を取り上げ、症状の特性によって起きる問題と原因と対策を、図やイラストなども加えわかりやすく解説していて読み応えがある。

 1冊読み終えて改めて思うのは、人間は千差万別、ASDも人それぞれ。できないこともできることもまさにその子の個性で、個性というのは育て方次第でいくらでも伸ばすことができるということだ。

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文=樺山美夏