Jアラートが鳴り響く日本列島。重大な岐路に立たされている我々に問われていること 百田尚樹著『カエルの楽園』

文芸・カルチャー

2017/9/29

『カエルの楽園(新潮文庫)』(百田尚樹/新潮社)

2017年8月29日、そして直近の9月15日、今手に持っているそのスマートフォンが大音量で不気味な警報音を鳴らしたという人も多いことだろう。北朝鮮のミサイル発射は年々その脅威を増している。いかなる理由があっても、他国の兵器が我々の暮らす土地の真上を通過しているという事態に不安を感じる人は決して少なくないはずだ。

一国の防衛となれば、それは政治とは切れない問題である。「政治の問題を考えるために、多方面の知識や意見を吸収して自分なりのしっかりとした考えを持つことが大切だ」などと言われても、何からやればよいのかさっぱり分からないという若者や、情報が多すぎて分別が難しいと感じる大人が多いのもまた現実。そんな世の中に満を持して投げ込まれ、多大なる反響を呼んだ一冊のベストセラー小説がある。『カエルの楽園(新潮文庫)』(百田尚樹/新潮社)である。本書の何よりも優れている点は「だれにでも読みやすい」ことだ。

平和なカエルたちの理想郷「ナパージュ」

国を追われた2匹のアマガエルは、数多の危険をくぐり抜けた末に夢の国ナパージュに辿り着く。ナパージュ、英語表記は「NAPAJ」。もうお気づきだろう。この小説は可愛いカエルたちの織りなす寓話となっている。しかしこれを単なる寓話として片付けられないということは本書を読めばすぐに分かるはず。巧妙で痛烈なカラクリが随所にちりばめられているのである。

何よりも先に強調したいことがあります。『カエルの楽園』は誰でも気楽に読める寓話の形をとりながら、日本国の本質を鋭く抉(えぐ)り出した名著であるということです。(櫻井よしこ・本書解説より)

読後きっと、「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません」という作者によるお決まりの一文が、にくいほどウィットに富んでいると感じられるはずだ。

百田尚樹氏の凄さは「議論を活性化させる力」

政治問題を民主主義的に進展させていくためには、多様な意見を持ち寄って建設的に議論していかなければならない。百田尚樹氏の著作や発言は常に賛否両論の嵐を巻き起こす。それは彼が世間から大いに注目されているということの証拠だ。彼のように、思想に軸がありなおかつ注目度の高い人物は、賛否にかかわらず世間にとって非常に貴重な存在だと言えよう。

今年も到来した「読書の秋」。「いまの日本の在り方」を考えながら楽しんでみてはいかがだろうか。

文=K(稲)