『ノンストップ!』『バイキング』で話題! いざというときに揉めない ◯年後に離婚するという約束=「離婚約」とは?

恋愛・結婚

公開日:2017/10/6

『離婚約』(じゃい/双葉社)

 アラサーともなれば、女友達の結婚報告に出産報告、転職の報告と、周囲がにわかにざわついてくる。中でも驚くのが、「離婚した!」とさっぱりした顔で言ってくる知人友人の多いこと。「妻は三つ指ついて帰宅した夫を出迎えるべし」というような、ひと昔前の家庭像が未だ幅を利かせる筆者の住む田舎ですらそうなのだから、従来の結婚観はすっかり変わりつつあるようだ。

 その象徴のひとつが、『離婚約』(じゃい/双葉社)で描かれる夫婦間の取り決めのように思える。本書は、お笑いトリオ「インスタントジョンソン」のじゃいさんが、25年以上の付き合いである妻と交わした「4年後に離婚するという約束(=離婚約)」について書いたものだ。

「離婚約」。聞き慣れない言葉だ。それもそのはず、「離婚約」とは著者の造語で、曰く「『婚約』があるのだから『離婚約』があってもおかしくはない」とのこと。著者がブログで離婚約について発表するや凄まじい反響を呼び、ワイドショーを始めとして多数のメディアに取り上げられたという経緯がある。

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 著者が離婚約に至ったいきさつは次の通りだ。「家のことを手伝ってくれない」「一緒にいると頭痛がする」などなど、妻の著者に対する不満が積もりに積もって限界を迎え、「2歳の息子が小学校に上がるまでの4年間は我慢するけれど、4年経ったら離婚」と宣言。著者はそれを抗うことなく受け入れた。いわゆる”円満離婚”と言える。

 ふつう離婚話ともなれば、昼ドラ顔負けの修羅場が繰り広げられそうなものだ。実際、本書で離婚約の「効能」について言及している夫婦問題カウンセラーの立木ミサさんは、「じゃいさんのようなケースは本当に珍しい」とコメントしている。

 しかし著者の例をただの「例外」として捨て置けないのは、離婚約には「離婚まで猶予がある」という大きなメリットがあるからだ。時間的猶予があれば離婚を切り出された側も慌てふためかなくて良いし、切り出した側も資格を取ったり婚活をしたりと、離婚に向けた準備ができる。熟年離婚ならなおさらだ。妻から突如三下り半を突きつけられ、生活能力もないまま取り残される夫は多い。

 筆者も夫婦歴2年だが、しみじみ感じるのは「夫婦は近すぎる」ということだ。あまりに近すぎて、許せないところが嫌でも目についてしまう。坊主憎けりゃ袈裟まで憎くなるのだ。離婚約を取り交わし、冷却期間を置くことで、再びパートナーの良さを見つめ直すこともあるだろう。そう考えると離婚約は、お互いが健康で文化的な最低限度の結婚生活を送るための、強力な手段となりうるに違いない。