【「男飯」漫画特集(4)】シンプルだからこそ王道! 新撰組隊士たちが繰り出す「食」の斬撃を体感せよ【作ってみた!】

マンガ

公開日:2017/10/7

『だんだらごはん』(殿ヶ谷美由記/講談社)

 料理漫画とひとくちにいっても、そのアプローチはさまざまである。料理人が成長していく軌跡を描いたものや、激しい料理対決が展開されるバトルものなど、料理は多くのジャンルと親和性が高いのだ。もちろんそれは「歴史もの」にも当てはまる。『だんだらごはん』(殿ヶ谷美由記/講談社)はタイトルだけだと分かりづらいが、実は「新撰組」を題材にした「歴史もの」だ。新撰組の隊士が着ていた羽織の袖と裾が「だんだら模様」であったことがタイトルの由来であろう。

 物語はまだ新撰組が結成される前の武蔵国多摩郡から始まる。メインとなるのは「沖田総司」と「山口一(のちの斎藤一)」の交流だ。沖田をちょっと苦手としている山口だが、沖田に懐かれてよく行動を共にしていた。その過程で元気のない近藤勇に「玉子ふわふわ」を振る舞ったり、剣術道場・試衛館の仲間たちと「にら雑炊」を囲んだりといった形で料理が登場する。

 本書の巻末にはメインで登場した料理のレシピも載っているのだが、やはり基本は新撰組の物語。山口がある騒動から旗本の家の者を斬ってしまい、名前を「斎藤一」と変えて京へ身を隠すことに。沖田は斎藤の一件を自分に責任があると感じつつ、試衛館の面々と「浪士組」に参加して京へと向かう。その道すがらに、当時有名だった「みかりや」の「柚餅子(ゆべし)」を食べたり、同宿となった芹沢鴨に「かけ」と呼ばれるラーメンを作ったりと歴史を絡めた料理が登場するのだが、作るのに期間がかかる、レシピが推測になってしまうなど再現しづらいものも。しかしその一方、非常にシンプルで簡単に作れそうな料理も割と出てくるので、そちらを試してみよう。

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【軍鶏鍋】

 この料理は、斎藤の一件で落ち込む沖田を元気づけるため、土方歳三が自ら腕をふるって作り上げたもの。歴史的には、江戸時代末期に軍鶏鍋が流行したとされ、坂本龍馬も好んだといわれている。軍鶏肉は近場ですぐに手に入るというわけではないが、本書には「なければ鶏肉」とあるので素直に従っておく。材料はすべて「適量」となっているので、およそ目分量で「鶏肉300g」「長ネギ1本」「粉山椒お好みの量」「調味料『みりん1:酒2:醤油1:水6』」以上である。作りかたは以下。

1.調味料を鍋に入れ沸騰させ、割り下をつくる。
2.ネギ、鶏肉を切って、鍋に入れ煮る。
3.山椒をまぶして完成!

 極めてシンプルである。ゆえに鶏肉とネギのうまみがダイレクトに感じられて「美味」以外の言葉はない。ピリリとした刺激が欲しいなら粉山椒をたっぷりとかけよう。調味料の比率は好みによって加減すべし。今回、野菜はネギだけだったが、もちろん他の具材を追加してもかまわない。

 歴史を扱った漫画は数限りなくあるが、史実を追いながらそこに「食」の歴史を織り込んでいくスタイルはかなり珍しいだろう。しかしタイトルに「ごはん」と付いていても、これは紛れもなく新撰組の物語なのだ。新撰組結成後、血風吹き荒れる京を舞台に、どのような食文化が語られるのか。「誠」の文字を背負う身の上としては、無関心ではいられないのである。

調理・文=木谷誠