「怒り」に振り回されない人と、振り回される人の違い

暮らし

公開日:2017/10/11

『「怒り」を活かす人、「怒り」に振り回される人』(和田秀樹/海竜社)

 人間の感情の代表である喜怒哀楽。私たちが日々、多かれ少なかれ抱く感情だ。そのひとつの「怒り」は、社会生活を送るうえで問題を引き起こすこともある厄介な感情。もちろん、プラスに働くこともあるのだが、コントロールしないと、人間関係で大きな支障をきたすこともある。ビジネスの場面では、相手が怒ってしまった時に、うまく対処できないと大きな損失につながりかねない。

『「怒り」を活かす人、「怒り」に振り回される人』(和田秀樹/海竜社)では、精神科医である著者が、「怒り」の感情について、日常的な場面での対処方法から心理学的考察まで、分かりやすく解説している。ここでは、多くの方の参考になりそうなビジネスシーンでの「怒り」への対処方法をご紹介する。

■相手が怒ってしまった場合……白黒決めずに待つ

 会話や会議の席などで相手が怒りの感情に振り回されてしまった場合、最も効果的なのは「待つ」こと。どんな怒りであっても時間が経過すれば鎮まっていく。怒りに振り回されている時は、外部からの刺激に対して、いい反応が期待できないばかりか、火に油を注いでしまうことも。怒りを鎮めるのに最も有効なのは「時間」だ。著者はこのようにアドバイスする。

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かりに、対立に至った事柄が深刻なものであり、相手にとっても、自分にとっても「白か黒か」で譲れない要素を含んだものであっても、です。「待つ」と「時間」には、おたがいの頭の中に「グレー」を思いつかせる力があるのです。

■自分が怒っている場合……下手にでる

 人間は、怒っている時に自分が偉く思えるそう。しかし、偉そうにしていると周囲の反応は冷たくなる。つまり、怒っている時ほど、「自分は偉くない」という顔をしたほうが、理解を得やすい。例えば、買い物中に店側の対応が悪い場合、怒りに振り回されて怒鳴ってしまうとクレーマーのように扱われてしまうかもしれない。一方で、「いくら言っても相手にしてもらえない」などと言えば、気の毒な消費者として周囲の客も店側のミスだと考える。これが賢い怒り方。言い方ひとつで、周りへの印象は大きく変わる。著者は以下のように述べている。

大切なことは、自分に怒りを生じさせた事柄に対して「いかに周囲にいる多くの人の共感を得られるか」「いかに自分の怒りが正当なものであるかを理解してもらえるか」です。

■相手を怒らなければならない場合……「ワンマター思考」で臨む

 相手が失敗して叱責しなくてはならない場面。そんな時、やってはいけないのが、怒りの原因の事件や出来事とは関係のないことを引き合いに出して怒りをぶつけることだ。目の前にある不祥事にのみ注目し、冷静に協議することが大切。そうすることで、失態を犯して動揺している相手も冷静さを取り戻すことができる。これこそが「ワンマター思考」であり、著者は以下のように説明する。

つまり、怒り、不満の感情を凍結して、不祥事の収拾という「ワンマター」に絞ってコミュニケーションを図るべきなのです。これができるビジネスパーソンのスタイルです。怒ることを目的にしてはいけないのです。

 私生活でも仕事でも「怒り」の感情は避けて通ることができない。しかし、その感情に振り回されてしまうと、人間関係に亀裂が入ることもあるし、仕事で大きな支障をきたしてしまうこともある。それを回避するには、「怒り」に振り回されないことが大切。冷静に対処すれば、周囲から一目置かれて自分の評価が上がるかもしれない。簡単なことではないが「怒り」を活かすことは可能だ。本書では、ビジネスシーンだけではなく、家族関係の「怒り」や、「怒り」の正体など、「怒り」という感情が包括的に解説されている。「怒り」に振り回されず、活かせるようになるべく、参考にしてみてはいかがだろうか。

文=松澤友子