ICBM、PAC-3……有事が懸念される今こそ知りたい“ミサイル”の基礎知識

社会

公開日:2017/10/16

『図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本』(井上孝司/秀和システム)

 北朝鮮の相次ぐミサイル発射を受けて、日本国内でも戦争を危惧する声が聞かれるようになった。ニュースでもたびたび取り上げられているミサイル問題であるが、気になるのは報道で取り上げられる様々なキーワードだ。

 そもそもミサイルとは何か。どのように防衛システムが働くのかなど、そんな疑問に答えてくれるのが『図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本』(井上孝司/秀和システム)である。ミサイルに関する専門用語やメカニズムを、写真入りで分かりやすく伝えてくれる。

◎標的へ誘導する装置を持つのがミサイル

 ミサイルが“空を飛ぶ兵器”であるというのは想像にたやすい。しかし、明確な定義というものはあるのか。兵器といっても様々な種類があるが、本書によれば「誘導制御機構の存在」が他の兵器と異なるミサイルの特徴だという。

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 誘導制御機構とは「目標を発見・捕捉するとともに、自身をそちらに向けて誘導する仕組み」のこと。例えば、いわゆる「地対地ミサイル」と呼ばれる地上から別の地上に向けて発射されるミサイルは、都市や建物といった移動しない標的にめがけて使用される兵器だ。

 北朝鮮のミサイル問題で取り上げられる「ICBM」はこの一種で、日本語では「大陸間弾道ミサイル」と訳される。アメリカとロシアの間での核軍縮条約における「アメリカ本土の北東国境とソ連本土の北西国境を結ぶ最短距離」の基準に合わせて、射程距離がおおむね5500kmを超えるものと分類されている。

 また、英語では「ミサイル」と呼ばれるが名称も様々。日本国内では防衛省だと「誘導弾」、この他にも下することしかできない特性から、多くは戦闘機などで空から地上を狙う「空対地ミサイル」として使用されているという。

◎状況に応じた「ミサイル防衛」構想の実現が急務

 ミサイルがもし自国に撃ち込まれたら。北朝鮮のミサイル問題を受けて、懸念を感じる人たちがいるのも事実ではないだろうか。万が一の事態に備えて、検討されているのが「ミサイル防衛(MD)」構想である。

 現在のところ、本書によれば弾道ミサイルについては、専用の迎撃ミサイルを用意して対処するのが第一とされている。北朝鮮のミサイル問題でよく取り上げられた「PAC-3」はその一例で、地上から空の標的を狙い撃つ「地対空ミサイル」であるパトリオットを改良した迎撃専用の兵器である。

 ただ、厳密にいえば発射直後や飛翔の途中、地上に限りなく接近した最終突入段階といった様々な状況に合わせた迎撃システムが必要となり、日本では、イージス艦による海上での迎撃、さらには地上からの迎撃を行えるシステムの構築が検討されている。

文=カネコシュウヘイ