関ジャニ・丸山隆平主演『泥棒役者』嘘から始まるすれ違いコメディー

小説・エッセイ

2017/10/14

『泥棒役者(角川文庫)』(西田征史:原作、三羽省吾:著/KADOKAWA)

 すれ違いが生み出すドラマ。それはとても喜劇的で、しかし思いもかけぬところで斬新な物語としての深みを発揮して閉ざされた空間に奥行きを創り出す。そんな映画、『泥棒役者』(監督・西田征史)が11月18日に公開される。映画の公開に先立って、小説家・三羽省吾によって手掛けられた小説『泥棒役者(角川文庫)』(西田征史:原作、三羽省吾:著/KADOKAWA)が出版された。

■塗り重ねられる「とっさの嘘」によって複雑化していく「嘘の筋書き」

 主人公のはじめは、かつて鍵開けの名人だった。少年院から出所した彼は泥棒から足を洗い小さな町工場で働きはじめる。アパートに帰ると最愛の彼女が夕飯の支度をして待っている、幸せな日々を送っていた。そんな矢先、出所した先輩泥棒の畠山に脅され泣く泣く盗みを手伝わされることに…。

 絵本作家の豪邸に忍び込めたのは良いものの、次々と癖のある「刺客」が訪れてくる。空気の読めないセールスマン、男勝りの女編集者、“本物”の家主であるハイテンションな絵本作家、四十代夢追いクレーマーの隣人…。自身が泥棒だとバレないように、はじめは各人に対して嘘をつき、「役者」として嘘の立場を演じ続ける。嘘を信じた各人のすれ違う誤解が奇跡的に絡み合うことによって、物語は思いもよらぬ方向に転がっていく。

 嘘によって作られた状況が新たな嘘を呼び、それがまた予測不可能な状況を作ってしまい、もう本人には収拾がつかなくなってしまう。本書はトンチンカンな嘘や勘違いが繋がっていく描写が実にコミカルで、読みながらニヤニヤしてしまうことだろう。とっさに嘘をついたことで「役者」として演じなければならなくなり大変な思いをした…。皆さんにもそんな経験はないだろうか?

■予測不可能な展開から生まれる愛と団結

 物語が進み各人のすれ違いが絡み合っていく過程で、それぞれの背負っている「過去」が見え始めてくる。人間同士が交差する過程では、人々の過去も触れあっていくのだということを本書は気付かせてくれる。嘘によってどんどん脈絡がおかしくなっていくことによって、予測不可能な人間関係が形成されていく。そんな偶然の産物は、思いもよらぬ発見や感動を連れてくる可能性をも秘めているのだ。「豪邸の中」という閉鎖された空間で個性の強い登場人物たちによって生み出されていくコミカルなストーリーと、その中に織り交ぜられた温かな人間描写にも注目だ。

 本書は原作・西田征史のユーモラスな脚本と小説・三羽省吾の巧みな描写が絶妙な相性で絡み合った、非常に完成度の高いエンターテインメント小説だと言えよう。また、映画『泥棒役者』は丸山隆平(関ジャニ∞)の単独映画初主演作品として注目を集めている。丸山隆平、市村正親、ユースケ・サンタマリア、石橋杏奈、宮川大輔、高畑充希、片桐仁、峯村リエといった豪華キャストによる“すれ違い”の掛け合いに期待したい。小説と映画と、併せて楽しみたい作品だ。

文=K(稲)