マンションを買うなら人気の小学校がある地域?「学区と世帯収入」という新しいマンションの選び方とは

暮らし

公開日:2017/10/17

『マンションは学区で選びなさい』(沖有人/小学館)

 マンションを購入するとき、誰もがどの地域に住むべきか迷う。治安の良い地域はどこ? ブランドのある街に住むべき? 会社に通う上で便利な路線は? あらゆる選択肢が我々を悩ます中、『マンションは学区で選びなさい』(沖有人/小学館)は、「学区と世帯収入」という新しい指標を提唱している。これはどのような考え方なのか。本書の一部をご紹介したい。

■マンションは人気公立小学校のある学区から選べばいい

 読者は「公立小移民」という言葉を知っているだろうか。お目当ての公立小学校に子どもを通わせるため、その学区内に引っ越す世帯のことだ。「わざわざそれで引っ越しとは……」と思う読者もいるかもしれないが、本書によると人気の公立小学校の定員の2割は「公立小移民」が占めているそうだ。その理由は当然、教育環境の整った学校に子どもを通わせたいという親の願望に他ならない。

 毎年定員の2割がその学区内に移住してくるということは、需要が供給を上回るので、その学区にあるマンションの資産性は高くなる。つまりマンションは人気公立小学校のある学区から選べばいいのだ。

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■平均世帯収入と中学受験進学率

 国の調査である「住宅・土地統計調査」を見ると、市区町村ごとの世帯収入の分布が分かる。さらに国勢調査で市区町村ごとの最終学歴が分かるので、これらを組み合わせると、市区町村別に平均世帯年収と大学卒業者のデータが出せる。

 読者も予想がつくと思うが、当然大学卒業者が住む割合が大きいほど世帯収入も上がる相関が割り出せた。それと同時に本書では、大学卒業者割合が高く、平均世帯収入も高い家庭群では、国立・私立中学校への受験進学率も高いというデータを出している。

 中学受験進学をするためには、良い小学校に通わなければならない。これらのデータを組み合わせると、平均世帯年収が高い地域の小学校は人気ということだ。本書ではここから「加重平均」などを用いて丁目ごとにデータを割り出し、人気の学区を割り出す方法を紹介しているが、正直ちょっとややこしい。本書では東京23区、神奈川県、千葉県、埼玉県の上位年収の公立小学校を紹介しているので、計算が苦手な方は本書を手に取った方がいいだろう。

■持ち家か賃貸か

 本書によると、マンションを購入したからといって「終の棲家」にする必要はないそうだ。事実、首都圏のマンションでは10年で約2割が住み替えており、都心に限ると3割を超える。マンションは引っ越すときに売る「資産」なのだ。したがって、マンションは「住み替えができること」を最低条件に選ぶのがコツ。

 コスト面でもう少し話をすると、持ち家と賃貸の違いは「金利」と「税制」の2点に集約される。不動産投資に対するローン金利よりマイホームに対するローン金利の方が圧倒的に安く、マイホームに関する税制優遇を含めると、「持ち家が賃貸に勝る」と本書は断言している。そろそろ持ち家が欲しいとお考えのご家庭はぜひ参考にしてほしい1冊だ。

文=いのうえゆきひろ