泣けると話題に! 17歳から年老いて死ぬまでの男性カップルを描いた『Life 線上の僕ら』

マンガ

更新日:2017/11/6

『Life 線上の僕ら』(常倉三矢/芳文社)

「尊い……」というのは、神がかって素晴らしいBLカップルを前に、腐女子が感動のあまり漏らす、感情が極まった際に発する言葉なのだが、従来の意味で本当に「尊い……」とつぶやいてしまうBLマンガがある。『Life 線上の僕ら』(常倉三矢/芳文社)である。

「泣ける」とじわじわ話題になり、12月には新垣樽助さんと興津和幸さんという、今やBLドラマCD界では欠かせない人気声優でドラマCD化も決定している本作。このお二人が、高校生から老年までをどのように演じ分けるのかという点でも注目されている。

 夕希(ゆうき)は、空想癖のある、明るく無邪気な高校生。ある時、「白線ごっこ」の最中、他校の高校生・晃(あきら)と出会う。白線ごっことは、「白線以外を歩いたらダメ」という、時々小学生がやっているような他愛のない遊びで、夕希と晃は白線上で出会った「遊び仲間」だった。

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 晃が思わず夕希にキスをしてしまったことから、二人の関係は友人から恋人に。大学生になって本格的なお付き合いを始める。その後、ちょっとしたすれ違いもありつつ、社会人になり同棲を開始。晃は一般企業の会社員で、夕希は駆け出しの脚本家。仲良しな二人は愛を深め合い、ハッピーエンド。

 ……と、今までのBLならここで物語が終わっているところだが、本作は違う。

 30歳が近づき、常識人で真面目な晃は障害の多い男同士という関係に希望を持てなくなるように。このまま夕希との関係を続けていけるのか不安になり、世間体を考えて関係を終わらせるべきだと、別れを告げる。

 その後、晃は仕事で付き合いのあった女性と結婚。夕希は晃のことが忘れられず、他の男性と関係を持つが長続きせず。

 数年が経ち、晃は愛のない結婚生活に心をすり減らしていた。夕希と別れたのは、本当に彼を愛していて、だからこそ、失うのが怖かったからだと気づいた晃は、妻と別れることを決意。

 すぐに夕希に連絡をとるが、番号は変わっており、様々な手段を使って彼を探すものの行方は分からないまま。

 しかし、晃が諦めかけた時、二人はとある意外な場所で、運命的な再会を果たすのだ。

 一度別れを経験したことで、お互いがお互いの大切さに改めて気づいた二人は、その後一生、年老いて亡くなるまで、共にあり続ける。

 というのが、ざっくりしたあらすじ。

 本作、「泣ける」という評判だったので興味を持って読んでみたのだが、私は泣くというよりもジーン……とした。号泣するというよりも、もっと深いところで胸に響くというか、「尊い……」と感動したのだ。

 男同士でなくとも、「一生同じ人を愛し続ける」ことは簡単ではない。けれど、どんなことがあっても「この人だ」と惹かれ合い、ケンカしても年老いても、人生の「終わり」まで寄り添う姿に、「尊さ」を感じた。胸にこみ上げるものがあった。

 少女マンガのような胸キュンもありながら、こんな風に(ある意味)死生観を考えたりするとは思わなかったので、驚きと共に、今までにないBLとして高く評価されていることも頷ける一冊だった。

「白線」は二人にとって、お互いを見失わないための目印である。それは死によって二人が分かたれた後も、変わらない。白線の先には、運命の人がいる。単行本一冊の中に、二人の男性の人生が詰まっている本作、キュンとして、深い。

文=雨野裾