100年後も地球を残すために立ち上がった1人の男の物語――月曜からやる気がでるノンフィクション

ビジネス

2017/10/23

『世界は自分一人から変えられる―貧困と環境破壊をビジネスで解決した男の物語』(阪口竜也/大和書房)

 今年の夏は、陽ざしが少なく、雨が多かった。豪雨や洪水もあちこちで発生した。日本だけでなく、世界の至るところで見られる異常気象。その原因と言われる環境問題が取り上げられるようになったのはかなり昔のこと。CO2削減などの取組みが行われてきた一方、近年は、ファストファッションや100均など安価な製品が主流となり、大量生産、使い捨て的な消費はむしろ加速しているように見える。

 消費者である私たち1人1人の行動も関係しているはずのこの問題。自分1人が努力したところで何も変わるわけがない、何をしていいかわからない、そう思っている人も多いだろう。『世界は自分一人から変えられる―貧困と環境破壊をビジネスで解決した男の物語』(阪口竜也/大和書房)は、そんな私たちに訴える。誰もが世界を変えられる可能性を持っていると。

 著者は、シャンプーや石鹸などの日用品を開発し販売する事業「みんなでみらいを」を運営。その商品は、作れば作るほど環境がよくなり、使えば使うほど健康になり、下水に流しても環境に負担がないという。また、カンボジアで植林をし、そこから採取したものを製品の原料にし、現地の環境改善や貧困解決につなげるという循環型ビジネスの仕組みも作った。そのプロジェクトは、地球温暖化対策を話し合う国際的な議論の場、COP21で発表され、国連に加盟する国々が達成を目指す、世界を変えるための「持続可能な開発目標」SDGsに貢献した国内企業に与えられるSDGsビジネスアワードの大賞も受賞した。本書は、世界を変えるビジネスの経営者となった著者の「熱意と行動」の物語である。

 緑豊かな静かな街で生まれ育ち、社会の枠組みの中で生きることに疑問をもっていた著者がビジネスの才覚を初めて発揮したのは芸大生の時。気楽な気持ちで始めたDJになるためにフリーペーパーを発行するのだが、そのために行った広告営業で得た縁と成功体験がその後の人生につながっていく。

 大学卒業後に1年限定と決めて企業に就職。そこで一通りのビジネススキルを得て、退職。その後、フリーペーパーの発行時、最初に広告を出してくれた美容室のオーナーへの恩返しのために共同経営者となり、会社を大きく成長させた。

 だが、ビジネスに関わる中で、気づいた。大切なのは、経済的な豊かさではなく、子どもの頃にあった当たり前の風景。それが失われつつある現実に目を向けたことから、現在のビジネスが生まれた。その行動は、常に型破りに見えるが、どこにいても、発想力、行動力、熱意があった。それらが人を動かし、人とつながる。本書には驚きの引き寄せエピソードの数々が綴られている。

 今では看板商品となった洗顔クレンジングが生み出されたのも、奇跡的な引き寄せからだった。たまたま展示会で目にとまった「強面のおじさん」が紹介していた不思議な液体洗剤。会場に持ち込まれていた全てを衝動買いして無理やり家にまで押しかけたら、著者がかつて調べて憧れた技術で作られたものだった。早速、サンプルを作り、テストを重ね、商品化。著者の探求心と行動力、そして、人間力が窺えるエピソードのひとつである。

 高校生の時すでに、世界を変えたいという志があった著者の軌跡には、思っていてもなかなか行動に移せない私たちへのさまざまなメッセージが込められている。始めるきっかけが欲しい人には、ぜひ読んでほしい一冊だ。

文=三井結木