冤罪被害者の少年が入学したのは、刑法犯が集まる謎の学園だった――理不尽な状況からの脱出劇を描く『極刑学園』

マンガ

公開日:2017/11/3

『極刑学園』(高木しげよし/白泉社)

 犯してもいない罪を背負わされ、犯罪者として扱われてしまう――冤罪。これは現実世界でもたびたび問題にされていることだ。そんな冤罪被害者となってしまったがために、理不尽な状況下に押し込められてしまった主人公を描いた作品が『極刑学園』(高木しげよし/白泉社)。本作はまさに「絶望」から始まる、異色の学園マンガだ。

 主人公・青井つばる(あおい・つばる)にかけられた容疑は、「保護施設職員の連続殺害」。もちろん、身に覚えがないつばるは無実を主張する。しかし、どうやら実刑は免れない状況。そこで提案されるのが、裁判員の判決を受け刑務所へ行く道と、「判決を受けずに極東少年刑務所学園へ入学する道」。この極東少年刑務所学園は、18歳以下の刑法犯の更生教育を掲げ、新たに設立された教育機関だ。ここでは判決で下る予定だった刑期がそのまま出席日数とされ、卒業するまで一歩も外へ出ることが許されない。また、校則違反をすると、その都度刑期が追加されてしまうのだ。ただし、正しい行いを心がければ、刑期が少しずつ短縮されていく措置も。そこで、冤罪被害者であるつばるは、品行方正を心がけ一刻も早く抜け出すことを決意する。

 ただし、そう簡単にはいかないのがこの物語の面白いところ。つばるのクラスメイトたちはみな親切で、彼を気にかけ、気を配ってくれる人たちばかり。けれど、みなの狙いは刑期短縮。そのためならば、他人を騙し陥れることもいとわない。素直で人を疑うことを知らないつばるはコロッと騙されてしまい、図らずも、クラスメイトたちが刑期短縮する手伝いをしてしまう。そして、その分、自らの刑期がどんどん追加されていくのだ。「いい奴はカモられる」。これが学園のルールである。

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 そんなつばるの心の支えは、幼なじみであるあきらちゃんから貰った「お守り」。ところがこのお守りを盗まれてしまったことから、事態はどんどん悪い方向に転がっていくことに……。

 「脱出モノ」は、少年心をくすぐるジャンルのひとつだ。知恵を絞り、理不尽な状況からいかに抜け出すのか。その頭脳バトルが見もの。また、そこで重要になるのが仲間の存在。しかし、本作では仲間は誰ひとりとして信じられない。まさに窮地に追い込まれたつばるは、いったいどうなってしまうのか。今後の展開に胸熱の予感満点だ。

文=五十嵐 大