論理的過ぎる夫と、テキトー奥さんのちぐはぐな日常。噛み合わない、理解できない、だけどそこが面白い!?

恋愛・結婚

更新日:2017/11/20

『理系夫とテキトー奥さん』(百田ちなこ/イースト・プレス)

「今日雨が降るっぽいから、傘持ってこうか」という奥さんに対し、「それってどこから得た情報? 根拠は? ソースは?」と尋ねる夫。

「根拠を知りたがる」。それが理系夫あるあるなのだ。

『理系夫とテキトー奥さん』(百田ちなこ/イースト・プレス)は、そんな論理的過ぎる夫と、感情優先で「おそらく」「きっと」という曖昧な言葉を多用する、おっとり奥さんの日常を描いたコミックエッセイである。

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 旦那さんは農学系大学院を卒業した年上のたくましい男性。現在はお菓子会社で研究開発を行っている「効率」「論理」が大好きなバリバリの理系夫。奥さんは漫画家・イラストレーター、常にテンパっており、感情的だという文系女子。

 性格的な共通点がない中、学生時代にアルバイト先の居酒屋で出会った二人。一時は遠距離恋愛にもなったものの、めでたくゴールイン。仲睦まじく暮らしているが、理系夫と文系奥さんの生活は、ことあるごとに「ちぐはぐ」してしまう。

 デートで一緒に美術館に行った時、旦那さんは「こういう美術鑑賞って、具体的にどうすればいいの?」「例えば一作品あたりの鑑賞時間の目安とか」と質問。奥さんは「基本的に自由ですけど……」と困り、「直感で楽しんだほうがいいですよ!」となんとかアドバイス。

 はたまた、奥さんおニューの緑色のカーディガンを「ミドリムシみたいでかわいいね!」と褒めることも。奥さんは「ミドリムシなんかじゃないよ!!」と抗議するが、旦那さんは「彼らはすごいんだよ! 5億年前から生息して、人間にとって食べ物にも燃料にもなるんだよ」と言い返す。服のヒラヒラ(フリンジ)も「イカのゲソ」と。女子のオシャレには関心ゼロで、自分の服装も機能性を重視して、こだわりはない。

 いかにも理系夫らしいな、と思ったのは、奥さんの作った味噌汁が「いまいち」だった時の一言。「定義できない味がするね」。……どこまでも形容詞を使わない夫!(笑) 普通に「マズイ」でいいのではないだろうか。さらに塩分計まで登場して、味噌汁を数値化されてしまうのである。家庭に塩分計がある時点ですごいけれども。

 こんな旦那さん……いかがだろうか。私は断然OKだ。

 というのも、「理系夫」というと、小うるさいイメージがあったのだが、本作の旦那さんは、そういう「細けぇー!」とイラつくタイプではなく、「ただただ論理的に物事を進めたい」「最も効率的な生活をしたい」と思っているだけ。だから、旦那さんに任せておけば無駄なく物事が進むので快適なのだ。

 本作の旦那さんは「理系男」のマイナスイメージを払拭してくれた。めちゃくちゃ「安心感と頼りがいのある男」じゃないか! 「不安はあるかもしれないけど、俺がいるから大丈夫だよ」という旦那さんのプロポーズ……ものすごいイケメンじゃないですか? 私も言われたいんですけど……。

 そんな理系夫とテキトー奥さんの日常。「正反対」だからこそ、笑って楽しく暮らせる二人なのだ。恋人や夫との「ささいな違い」にイライラしてしまう女性諸君、本作を読めば、違いを受け入れて笑っていけるようになるかも?

文=雨野裾