妻に働いてほしくない夫のホンネ。「世間体」か「浮気阻止」か、男心の機微を徹底解説

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公開日:2017/11/8

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 水曜ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)は、ワケありの過去を持つ主人公・菜美(綾瀬はるか)がひょんなことから主婦となり、街で起こるトラブルを解決していくストーリーです。citrusでは本ドラマの連動企画として、各放送回で取り上げる社会問題にまつわる記事を掲載。さまざまなジャンルに精通したcitrusオーサーが、ドラマをより深く楽しむためのヒントを提供していきます。

~『奥様は、取り扱い注意』連動企画 Vol.05~
「妻を働かせたくない夫」の取扱説明書

<第五話あらすじ>菜美(綾瀬はるか)ら3人は、妻の気持ちを理解しようとしない夫たちに不満を募らせていた。菜美との約束そっちのけで休日をのんびり過ごしたがる勇輝(西島秀俊)、京子(本田翼)の真剣な子作りの提案から逃げ続ける渉(中尾明慶)。「働きに出たい」という優里(広末涼子)の願いに聞く耳をもたない啓輔(石黒賢)。彼らの態度に不満を爆発させた3人はある日、家出してしまう。3人の運命はいかに…。

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今回ご登場いただくcitrusオーサーは、エッセイスト・講演家の潮凪洋介さん。「妻を働かせたくない」夫の心理について、ドラマのテーマにあわせながら潮凪さんが解説します。

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■元キャリア主婦には「生き地獄」

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 男女平等の時代と言われる昨今、「働いてお金を稼いでくれる妻」は男性からすると頼もしい存在のはず。自分の収入だけでは毎月マイナスになってしまう。そこで妻が働き、生活費を補てんする。Wエンジンで家計を支える夫婦の形です。

 しかし、こんな時代でも「家に入ってくれ」と妻に強く要望する夫が、世の中にはまだまだいます。そんな男性はたいてい裕福か、裕福とまでは言わなくとも、自分の給料だけで家族を養えます。ただ、「何かの理由」で、妻を家に入れたがるようです。『奥様は、取り扱い注意』で広末涼子さん演じる主婦・大原優里の夫・啓輔は、「働きたい」という妻の希望を「家事と育児をきっちりやってほしい」 と突っぱねます。こうした夫の姿勢に、 優里は不満を募らせます。これはリアルの世界にも見られる光景で、世の多くの妻が夫婦生活に不満を抱く原因となっています。

 私もこれまで、何人もの「元キャリア主婦」から、「生き地獄」のようだ、と聞かされました。実際、彼女らのほとんどは自分の欲求、つまり「労働意欲を満たす道」を選ぶようです。何らかの形で、あらゆる手を使い「納得いく仕事」を再開するのです。一度働く喜びを知った女性の「労働意欲を満たすことへの執着」には脱帽します。

■健気すぎる? 「妻を働かせたくない夫」の本心

「妻を働かせたくない夫の心理」「妻を『主婦』 にしたがる夫の心理」とはどんなものでしょうか。今回、私の知る「この種の夫」に、「なぜなんだ?」と詰め寄ってみました。

あ、周囲がみんなそうだから(大手広告代理店/44歳)

 周囲になんとなく合わせているという意見です。たしかに、大手広告代理店では「専業主婦文化」が主流なのかもしれません、しかし、さらに突っ込んでみると、こんな本音が飛び出してきました。

いや、浮気されるといやだしね(笑)

 彼は独身時代から「浮気症の人妻」の生態に詳しく、仕事上の付き合いで不倫した経験があります。そして、「ビジネス上の理由でいかに容易く女性が浮気をするか」熟知しています。だから、「働かせない」というのです。

いや~結構ね、妻は流されやすくて、俺とも最初“浮気同士”だったからね。独身時代だけど……そういう性格も知っているから、働かせたくないんだよ

 そこには、「妻に浮気をさせたくない」という夫の健気な意図が隠されていたのです。このようなケースの男性は、実際のところ多いのではないかと思います。その証拠として、他の男性から何件も同じような話を聞かされたことがあります。しかしそういう男性に限って、ビジネスタイムラブ・自由恋愛の達人なのが、苦笑いをこらえ難いところですが…。

 さて、もう一つ多かった理由が「プライドが許さないから」というもの。「俺一人の力でメシを食わせているんだ」というプライドを満たすため、妻を働かせないわけです。

スーパーでレジ打ちなんかしてくれるな
ファミレスでバイトしてくれるな

 そんな言葉を妻にかける男性は珍しくありません。ようは「世間体」。自分の力のなさを象徴するようなものだから嫌! 端的にいうとそういうことです。だから生活は、割とジリ貧のことも多い。武士は食わねど高楊枝といったところでしょうか。

■夫婦にも「働き方改革」が求められている

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 では結局のところ、夫と妻はどうすればお互いの希望をすり合わせられるのでしょうか。解決策として掲げたいのが、「互いに好きな仕事をする条約を結び、家のことを分担制にする」方法です。自分の勤める会社の経営悪化、リストラなどを想像しても、Wエンジンで貯蓄があった方がいいに決まっています。そして夫だって、少しくらいは家のことをやるべき。「俺は家族を養ってんだ」とまったくやらないままでは、必ず10年後、20年後、「あの時は……」と妻が小言で詰めてきます。少なくとも、我が家はそうです。家事も分担した方がいいですね。

 そしてもう一つ、妻に仕事をやってもらった方がいい理由があります。なにしろ、妻が輝くのです。加えて、仕事の絡んだ会話が一切できず話の合わない夫婦になってしまうことも防げます。妻が働き、社会的な役割を担っていれば、会話も弾みます。さあ、いかがでしょう。夫婦にも「働き方改革」の時代がやってきました。変化を恐れず、乗り越えてゆきたいものですね。

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 潮凪さんの提案を試せば、夫婦生活は今より充実するかもしれません。記事のエピソードとは異なりますが、優里もまた、働きに出られない環境にモヤモヤした思いを抱えています。優里と啓輔は果たして、お互い納得するまで意見をすり合わせられるでしょうか…。

日テレ水曜ドラマ
『奥様は、取り扱い注意』

毎週水曜22時~
<出演>
綾瀬はるか
広末涼子
本田翼
西島秀俊 ほか
<スタッフ>
原案・脚本:金城一紀
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:枝見洋子 松本明子(AXON)
演出:猪股隆一 ほか
製作著作:日本テレビ
HP:http://www.ntv.co.jp/okusama/index.html

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文=citrus エッセイスト 潮凪洋介