「自分は浮気相手だ」とわかっていても、好きでいるのをやめられない――話題沸騰の恋愛コミック『liar』最新第4巻発売!

マンガ

公開日:2017/11/11

『liar』(もぁらす:原作、袴田十莉:作画/双葉社)

 曖昧にやりすごすズルさを身につけた大人ほどタチの悪いものだが、そういう男にほどハマってしまうのが割り切れない大人の恋愛かもしれない。駆け引きとすれ違いだらけのリアルな恋模様を男女それぞれの目線から描いた『liar』は、電子書籍で累計450万部ダウンロードを突破した大人気コミック。単行本化されるやたちまち重版となった同作の最新第4巻が発売された。まずはこれまでのあらすじをおさらいしてみよう。

■思わせぶりなズルい男・市川に翻弄される美紗緒が妙にリアル

 主人公は23歳の新米社会人・美紗緒。同じ部署の先輩で愛想のワルい彼こそトップ・オブ・ザ・ズルい男の市川。美紗緒の恋のお相手である。「おまえのことけっこー好き」なんて思わせぶりなメールをしてくる市川に、いつのまにか気持ちをからめとられ、気づけば考えるのは市川のことばかり。くだらないメールのやりとりや、軽口をたたきあううちにひかれるも、市川に彼女がいることを知る。それでも美紗緒への思わせぶりな態度を変えない市川に、やめとけやめとけそんな男! と言いたくなるのだが、恋愛の沼にハマった本人はわかっちゃいても簡単に抜け出せないもの。もがくほど深く沈んでいく美紗緒が妙にリアルなのである。

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■市川の過去のトラウマが明らかに。そして、美紗緒とカラダだけの関係が始まる

 リアルなのは市川も同じで、2人の視点が交互に描かれていくのが本作のおもしろさ。彼のほうも美紗緒への想いと過去の恋愛トラウマとのあいだに葛藤を抱えているのが読み進めていくうちにわかるのだ。大学生で強烈なクセのある女性に翻弄されたら、そりゃ恋愛に深入りする気もなくなるよね……とやや同情せずにはいられない。誰にもうめることのできなかった心の穴を美紗緒だけが塞ぐことができると気づいた市川は、恋人との関係を清算し美紗緒だけを大事にしようと決めるのだが、そう簡単にはいかない。別れたくない一心で、市川の恋人が地雷化。おかげで美紗緒に、好きだとも付き合おうとも言えないまま、想いだけが募りに募って、結局カラダだけの関係が始まってしまう。そんな自分を情けなく思う市川の「本心」も描かれているため、読み手としては余計にどう落とし前をつける気!? とやきもきさせられる。そして2人の関係は、3巻で急展開を見せる。

美紗緒と市川それぞれの視点からホンネが描かれる

■市川のホンネが多く描かれる3巻で、ストーリーは急展開を見せる

 3巻で描かれるのは、市川が内面に秘めた深い想いだ。美紗緒のおかげで、誰かを大事に想う心をとりもどした市川は、それゆえに恋人のことも冷徹には見捨てられなくなってしまう。そしてここでまた、悪いクセも出る。「美紗緒ならわかってくれる、待っててくれる」という甘えが出るのだ。しかも自分が曖昧な関係を強いているくせに、美紗緒がそっけない態度をとると「俺ばっかりが好きみたいだ」なんて拗ねたりする。美紗緒がどんな想いでひとりの夜を過ごしているかなんて考えもせずに。だが、彼は彼で自分のツケを払おうとしているのもまた事実。どうにか市川にできる一番の誠実さで、美紗緒を幸せにするための道筋をつけたいと思っている。だけどそのやり方にやっぱりズルさが残っているから、美紗緒にはまるで伝わらない。ああ、ままならない。やるせない。やはり2人は、どうあっても一緒にはいられないのか……。

 3巻ラストで美紗緒の選んだ驚きの決断。一人の女性として、社会人として、自分を置いて美しく成長していく美紗緒に、市川はどう向き合っていくのか。大波乱の続きは発売したばかりの4巻でぜひ楽しんでほしい。

文=立花もも