誰だってヒーローになれる!『ちょっと今から仕事やめてくる』作者がおくる、がんばる勇気をもらえるビタミンストーリー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/11

『続・ヒーローズ(株)!!!』(北川恵海/KADOKAWA)

「こんな平凡でつまらない人生を送ることになるとは思ってもみなかった」という失望感を抱えながら生きる人はどのくらいいるのだろう。失望感の裏には、「こうなりたかった」という夢がある。思い通りにいかない日々を過ごしているのだとしても、少しの勇気を出せば、人生は変えられるはずだ。世界を救うようなヒーローにはなれなくとも、誰かにとっての憧れになることは必ずできる。

 北川恵海氏著「ヒーローズ(株)!!!」シリーズは、北川氏のデビュー作『ちょっと今から仕事やめてくる』と同様、思うようにいかない日々を送る人たちにエールを送るヒューマンストーリー。舞台となるのは、「ヒーローになりたい方、お手伝いします!」が売り文句のヒーローズ株式会社。業務内容は…「ヒーロー製造業」!?

 コンビニ店員の田中修司は、同僚・拓からヒーローズ株式会社のアルバイトを持ちかけられ、ひょんなことからそのままこの会社に入社。初老の紳士・道野辺、ホストのようなチャラ男・ミヤビ、恰幅の良い社長、そして、実はこの会社の一員だった拓とともに、夢への一歩を踏み出そうとする依頼人たちを徹底的にサポートする。

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 シリーズ第2弾『続・ヒーローズ(株)!!!』(KADOKAWA)では、ヒーローズ株式会社のなかで、さらに仕事に邁進する修司の姿が描かれる。周りの社員に比べて個性がなく、平々凡々な修司だが、依頼人の気持ちに寄り添おうと奮闘する。そして、修司たちのサポートにより、夢に向かい走り出す依頼人たちのいきいきとした姿に読者は自然と勇気づけられるのだ。

「獣医というヒーローになりたい」。自らの夢を家族に認めさせたい女子高生と彼女との接し方に悩む父親。「お父さんをヒーローに戻してほしい」。仕事を辞めたがっている父親を元の元気な姿に戻したいと、「カネの生る木」を探す少年…。すっかりすれ違ってしまったように見える家族でも互いを思う気持ちはある。そんな家族を修司は救うことができるのか。

 さらにこの巻では、ヒーローズ株式会社の他の社員の過去が明らかになる。拓のつらく悲しい子供時代。道野辺さんの娘への思い。拓、道野辺、ミヤビの家族同然の深いつながり。社員たちの思いを知った修司は、ある依頼を実現させようとする。

 いくら思い通りにいかない人生を歩んでいようとも、そんな毎日に失望しようとも、欲張りな私たちは夢を見続けることをやめることができない。そのすべてが叶えられるわけではないし、叶えられたとしても、夢の先に幸せが待っているとは限らなくとも、私たちは夢を見続ける。

 平々凡々な主人公と仲間たちの物語はほのぼのと温かい。そして、ヒーローは意外と身近なところにいるという事実に気づかされる。依頼人と社員たちの奮闘を見ていると、「ヒーローにしてほしい」「ヒーローになりたい」という思いが芽生えてくるのは私だけではないだろう。弱音ばかり吐いてばかりの毎日を送っている人にこそ、この本を読んでほしい。がんばる勇気をもらえそうなビタミンストーリーは、あなたの明日を明るく輝かせるはずだ。

文=アサトーミナミ