「乳酸菌」と「ビフィズス菌」の違いってナニ? 複雑な関係で成り立つ「腸内環境」の秘密

健康・美容

公開日:2017/11/15

『おなかにいるよ!ゆかいな仲間 腸内細菌キャラ図鑑』(藤田紘一郎:監修/PHP研究所)

 実は小生、お腹がゆるいほうでたびたび下している。これはいわゆる「腸内環境」の乱れではないかと思い、スーパーのヨーグルトコーナーを覗いてみるとさまざまな製品が並んでいた。あらためてその種類の豊富さに気づかされるが、どれを選ぶべきだろう? そもそも普段聞きなれている「乳酸菌」と「ビフィズス菌」だが、何がどう良くて、どう違うのか? まず、そこから学んだほうが良さそうだ。

 この『おなかにいるよ!ゆかいな仲間 腸内細菌キャラ図鑑』(藤田紘一郎:監修/PHP研究所)は人間の腸の中で、その人の健康を左右する腸内細菌のうち、代表的とされる44種をキャラクター化。それらをいわゆる「善玉菌」と「悪玉菌」、そしてどちらとも言い切れない「日和見菌」に分けて紹介。普段は馴染みのない細菌たちを親しみやすく学べる。

 善玉菌といえば乳酸菌とビフィズス菌だが、近年まで同じ乳酸菌として扱われていたそうだ。しかしそれぞれの性質や作り出す物質に違いがあるため、今は区別されている。まず乳酸菌だが、「乳酸発酵」で食べ物を腐りにくくする作用が知られている。それが人体に摂り入れられると、腸内にもともと住んでいる乳酸菌やビフィズス菌を増やし、悪玉菌の繁殖を抑えるのだ。一口に乳酸菌といっても、さまざまな種類があるのだが、代表的な存在といえば「乳酸菌シロタ株(L.カゼイYIT9029)」だ。

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▲『おなかにいるよ!ゆかいな仲間 腸内細菌キャラ図鑑』P34より

 かの乳酸菌飲料「ヤクルト」に含まれており、CMでもお馴染み。本書ではその特徴を「文句なし!正義のヒーロー」と称し、描かれたキャラクターは昭和テイストなヒーローのようだ。確かにそれも納得で、大腸がん予防や便秘改善、免疫力強化に、花粉症やインフルエンザ予防など多くの効果が期待されると紹介されている。「ヤクルト」は乳酸菌飲料の代名詞となるくらいに親しまれているだけに、まず試してみるのに最適だろうか。

 一方、ビフィズス菌にはどんな特徴があるのだろう。実は乳酸菌同様に乳酸を作るのだが、さらに酢酸も作るのが主な違いだろう。酢酸により腸内を酸性に傾け、アルカリ性を好む悪玉菌の繁殖を抑えるのだ。種類も乳酸菌に劣らず豊富なのだが、注目したいのは森永乳業により1969年に発見されて以来、半世紀近くビヒダスヨーグルトに使われている。「BB536株(ビフィズス菌BB536)」だ。

▲『おなかにいるよ!ゆかいな仲間 腸内細菌キャラ図鑑』P66より

 キャラクターも子持ちのお母さんのような姿で描かれ、安心感あふれるイメージだ。また「安全で多くの健康効果に期待」と紹介されており、O-157やインフルエンザの感染予防などの健康効果が期待されている。頼りがいのある、肝っ玉母さんといったところだろうか。

 では、逆に悪玉菌といえば何があるだろう? 本書で筆頭に挙げられているのが「ウェルシュ菌」だ。これが実に厄介な性質で「タフでしぶとく、高温も大丈夫」と称されるほどで、加熱により他の菌が死滅していくのを尻目にしぶとく生き延びるというのだ。

▲▲『おなかにいるよ!ゆかいな仲間 腸内細菌キャラ図鑑』P74より

 まるで昔のマフィアのような姿で描かれているが、その性質からなるほどと思える。もともと人の腸内にいる常在菌ではあるものの、自然界にも海や川、土などあらゆる場所に生息。その分、食品にも触れやすく食中毒の原因ともなっている。まるで、社会の陰から一般市民を付け狙う犯罪組織のようだ。また、調理後に常温で放置した料理は、繁殖の温床となりやすいのでご注意。

 他にも、「大腸菌」や「腸球菌」が悪玉菌として知られるが、実はこれらも腸内に常在し、普段は人と共存している。しかし、異常繁殖さえしなければ何ら問題はなく、むしろ「善玉菌のライバルとして刺激を与え、活性化させる」役割もあるのだ。結局は、バランスが大切。ヨーグルトや乳酸菌飲料も良いのだが、それに偏らない、栄養バランスの取れた食生活が、健康的な「腸内環境」には重要である。

文=犬山しんのすけ