バリアフリーは住宅だけじゃない!「あきらめなくていいんです」温泉エッセイストが推す体も心もぽっかぽかの宿とは?

ライフスタイル

2017/11/23

『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(山崎まゆみ/昭文社)

 冬到来。体を芯から温めたいとき、温泉が恋しくなる。湯船にじっくりつかれば、リフレッシュもできそうだ。しかし、温泉旅行をしたい、家族を連れて行きたいと思いながらも、高齢や障がい、手術痕が気になるなどで、旅行を諦めかけている人もいるのではないだろうか。

 『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(山崎まゆみ/昭文社)は、バリアフリーの温泉旅を後押ししてくれるガイドブックだ。前作に続く第2弾となる。高齢者や体の不自由な人の受け入れに対して、“志のある宿”ばかり、北海道から九州までの温泉地・計28か所が掲載されている。

 今回は、浴槽の形状を写真と図でビジュアル化。著者の丹念な取材による「予約前のチェックポイント」で、全ての宿の施設・客室状況や、入浴、食事の対応情報が充実している。早速、本書から東西2軒を紹介したい。どの宿もページの一番最初に“風呂情報”が図案化され、一目で分かる。

 まずは東日本から。神奈川県の「箱根湯本温泉・小田急ホテルはつはな」。この宿はバリアフリー対応の客室が2つ。うち1室は温泉が引かれている湯船の横まで、車いすを付けることが可能になっている。そして夕食は部屋食。移動で体を冷やすこともなく、車いすのまま、快適に食事を楽
しめる。

 続いて西日本からは、島根県の「松江しんじ湖温泉・なにわ一水」。バリアフリー対応客室は5室とのこと。大浴場も車いすが乗り入れ可能だ。

見ての通り、多くの写真に車いすがあり、大体の移動スペースが想像できて良い。さらに、送迎用リフト車も運行している(要予約)。

 また、宿紹介の合間にはコラムもあり、傷あとケアについても触れている。温泉につかりたいと思いながら、例えば乳がんや腹部の手術などでできた傷あとに、二の足を踏んでいる人も少なくないだろう。本書では、全国的に広がっている「ピンクリボンのお宿」の一覧や、湯船用にガーゼタオルを作った温泉郷、女性用、男性用ともに入浴時に着用OKの“湯あみ着”についても紹介されている。

 その他にも介護や入浴介助が必要な人のために“トラベルヘルパー(外出支援専門員)”や、身体の状態で旅の相談ができる全国の“バリアフリーツアーセンター”の情報、現地へ向かう公共交通機関のバリアフリー対応表も掲載されていて、旅の計画に役立つ情報が満載だ。

 著者の山崎まゆみ氏は、これまで世界31カ国1000か所以上の温泉を巡った温泉エッセイスト。温泉にまつわる著書多数手がけている。内閣官房による「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」に参画し、“バリアフリー温泉”の推進に尽力している。

 20年も前になるそうだが、著者には事故で体が不自由になった妹がおり、旅はあえて国内より海外を選んでいたという。当時は海外のほうが、国によっては特にバリアフリーに対する配慮が確立しており、何かとサポートを受けやすい時代だったようだ。

 だが、現在の日本は、インバウンド(訪日外国人旅行)が増加し続け、東京オリンピックまで1000日を切り、観光立国化を推し進めている。国内外、世代を問わず、すべての人が楽しめる観光が、ますます求められていくだろう。それは、設備だけでなく、“人対人”として、旅行者とどんな交流や配慮をしていくのか、問われている。宿が果たす役割は大きい。

 また、著者のアドバイスとして“事前に必ず宿に連絡し、日常生活に関わる体の状態や症状を伝えることが大切”とある。旅行者からもトラブル防止のために、旅が始まる前から宿との関係を築いておくことが肝心だ。なお、前作で紹介した温泉宿も一覧表で記載。今作と併用すれば、かなりの宿数から選ぶことが可能である。

 次回の旅は本書を活用して、誰もが心ゆくまで温泉を楽しめますように。

文=小林みさえ