旦那の不貞で離婚…「人生2周め」と思えばいい? 人気漫画家の意外な一面発覚!『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』でお悩み解決!

マンガ

公開日:2017/11/25

鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(鳥飼茜/祥伝社)

 “お悩み相談系”の本は数多くありますが、相性ってあると思います。著者の考えにいまいち納得できなくて、余計モヤッとしたり。筆者もこれまで色んなお悩み相談系の本を読んできましたが、生意気にも「えー、この考えってなくない?」とたびたび心の中で難癖をつけてきました。

 しかし、そんな筆者が、今までにないくらいしっくり来た一冊に出会ったのです。『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(鳥飼茜/祥伝社)です。

 鳥飼先生といえば、『先生の白い嘘』『おんなのいえ』でおなじみの漫画家ですよね。その鳥飼先生が、自身初となる文字の単行本を発売したんです。

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 鳥飼作品を読んでいる方ならおわかりだと思うのですが、鳥飼先生の作品は、読者の心をこれでもかというほど揺さぶるのが特徴。たとえば10月に最終巻が発売されたばかりの『先生の白い嘘』も、心をえぐるような内容で、クライマックスまでヒヤヒヤした人も多かったと思います。

 そんな漫画のイメージが先行して、「鳥飼先生って怖い人なのかな」「厳しそうなイメージ」なんて思った方もいるのではないでしょうか。失礼ながら筆者はそう思っていました! ところが、この本を読むとそんなイメージがガラリと変わるんです。

■何が起こっても、「人生2周め」と思って走り出せばいい!

 収録されている相談は、Web上で募集したそうで、相談のジャンルも恋愛だったり仕事だったり人間関係のことだったり、多種多様。それらの悩み一つ一つに鳥飼先生が回答してくれているのですが、考え方やモノの見方が独特なんですよね。「こういう視点があったのか!」という驚きとともに、前向きにさせてくれます。

 たとえば、32歳の主婦の方からのこんな相談。

「旦那の不貞で離婚が決まった。でも15歳からの付き合いでこの先不安。相手の女の連絡先はゲットしているが、内容証明くらい送りつけてやったほうがいいか?」

 個人的には、内容証明を送りつけたうえで、相手の会社や家族にも事実を伝え、取れるだけの慰謝料を取ってしまえとアドバイスしたくなります。でも鳥飼先生の答えは違うんです。

「15歳からのお付合いでご結婚に至り現在に至るまでの17年……同じ男性とともに人生を歩んでこられたことがとても素直に眩しいです。もうここで並の人生1回分走り切ったと言えると思います。」

 終わったことを嘆くのではなく、ここまで来たことをまずは褒めてあげよう! という精神です。さらにこう続きます。

「何よりなのが、第2回めの人生スタートが弱冠32歳であるということです。……ぜひ華麗に大胆に、2周めを走りだしてほしいです。内容証明なんて送り付けてる暇はありません。前へ前へ、です。」

 なんてことでしょう。相手をいかに陥れるかばかりを考えていた自分が恥ずかしくなります。終わったことにいつまでも執着していてはなんの意味もないわけです。「第2回めの人生」と思えば、心が救われるような気がしませんか? この言葉大好きです!

 このほか、「やまとなでしこの呪いがとけない」「お局化する自分が嫌だ」「美人の友達が憎い」など個性あふれる相談をあげ、鳥飼先生ならではの言葉を使って解決への手助けをしてくれています。こんな風に物事を捉えているから、素晴らしい漫画を描くことができるんだろうなーと、ぼんやり思ったりします。

 鳥飼先生、今まで勝手に怖そうと思っていてすみません! 読後はきっとこんな風に思うに違いありません。

■漫画家の頭の中を見てみたい人へ

 本書は、お悩み相談以外にも、鳥飼先生のエッセイを収録しています。鳥飼茜というペンネームを考えたN田くんの珍エピソードや、引っ越しが好きなこと、女友達との付き合い方についてなど、鳥飼先生のプライベートがかいま見えるのですが、それがまたオモシロです。不思議なことに、面白い人の周りには、なぜか面白い人が集まりますよね? 鳥飼先生ってまさにそんな人種なのだと思いました。

 さらに3章には、「鳥飼茜と3人の男たち」と題して、浅野いにお先生、古谷実先生、そして「くるり」の岸田繁さんとの対談を収録。

 浅野先生と古谷先生とのそれぞれの対談では、鳥飼先生のアシスタント時代の裏話が満載です。売れっ子漫画家たちの仕事場での様子ってこんな感じなのか~という気持ちにもなれます。

 鳥飼先生のファンにはぜひ読んでほしいですし、漫画家の考えていることを知りたい人にもオススメですし、今真剣に悩みを抱えているという人が読めば何かしらの救いがあると思います。価値観を変えたい・広げたい人は、ぜひ手にとってみてほしい。

文=中村未来(清談社)