愛する夫の死から、すべては始まった――ダメなときは頑張らなくたっていい! FacebookのCOOが教える、逆境からの立ち直り方

ライフスタイル

2017/11/29

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『OPTION B オプションB――逆境、レジリエンス、そして喜び』(シェリル・サンドバーグほか:著、櫻井祐子:翻訳/日本経済新聞出版社)

バラ色だけの人生を送っている人なんて、ひとりも知らない。生きていれば誰だって苦難に遭遇する。前もって察知できる災難もあれば、不意を襲われることもある。(中略)こうしたことが起こったときに考えるべきは「次にどうするか」である。

 これは『OPTION B オプションB――逆境、レジリエンス、そして喜び』(シェリル・サンドバーグほか:著、櫻井祐子:翻訳/日本経済新聞出版社)の冒頭に書かれている文章です。シェリル・サンドバーグは、FacebookのCOO(最高執行責任者)。日本では2013年に働く女性の必読書『LEAN IN』で幸せとキャリアが両立できることを説き、同書の出版部数は10万部を突破しました。その著者が、逆境からの回復をテーマにした本を書いたなんて、彼女に何があったのだろうと手に取らずにはいられませんでした。シェリル・サンドバーグは、休暇中に突然夫を失ったのです。彼女にとっては夫のいる人生がオプションAでした。でも、どんなに悲しんでみたところで夫は戻りません。次善の策としてのオプションBを取らざるを得なくなりました。そこから、彼女の新たな人生が始まったのです。

 本書のすぐれた点は、個人の回想録や感情の吐露にとどまることなく、どのように自分を立て直すか、父親のいなくなった子どもたちをどう折れない心を持てるように育てるか、同じように悲劇に見舞われた周囲の人をどうやって支えるか、そして社会や組織のあり方についての提言がされていることです。

 著者の経験に加え、多数の知人や友人のケースをはじめ友人の心理学者の研究結果も紹介されています。シェリル・サンドバーグも初めから、立ち直ろうと必死だったわけではありません。夫を失った当初はその悲しみが永遠に続くように思われ、乳がん検診の結果を受けて自分まで子どもを残して旅立ってしまうのではないかと強い不安に襲われます(後に偽陽性だったと分かる)。しかし、友人や家族、職場の力強いサポートを受けるうちに新たなスタートを切ることを決断していくのです。

 日本では、つらいことが起こっても本人はひたすら耐え忍ぶことが美徳とされているような雰囲気があると思います。周囲の人は腫れ物に触るように接し、不幸が起こったら喪に服すとか、自粛するのが正しいと考える風潮があるように見えます。しかし、本書で書かれているように、本人が積極的に感情を表現し、周囲の人がつらい経験をした人に手を差し伸べることはとても大切なことだと思います。逆境があるから人は成長できるなどと言われますが、この本で一貫して書かれているのは「めげない、へこたれないといった、精神論ではない。精神を支える力」です。オプションBを選択できる個人で構成された社会は建設的に成長していける余地が大きく、個人だけでなく社会にとっても大きなメリットがあると思わずにはいられませんでした。

オプションBであっても、私たちには選択肢がある。今も人を愛し……そして喜びを見つけることができるのだ。(中略)逆境から立ち直るだけでなく、逆境をバネに成長することもできるのだといまなら分かる。(中略)だれも好んでこの方法で成長したいとは思わない。でも悲劇は否応なしに起こり、そして私たちは成長するのだ。

 私たちの誰もが、いつか必ずオプションBを選択せざるを得ない状況になります。しかし、大切なのは「選択肢」があることを認識できるかどうかということ。逆境からの立ち直りが必要なのは、最愛の家族を失った人だけに限りません。失恋や、挫折、人間関係のこじれ、仕事の失敗、突然の病など。生きていれば遭遇するであろう苦難に対して適切に対応したいと考えている人におすすめしたい本です。

文=いづつえり